HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 18062 Content-Type: text/html ETag: "33e65b-468e-9a5c17c0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 18 Dec 2010 02:21:11 GMT Date: Sat, 18 Dec 2010 02:21:06 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年12月18日(土)付

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 東京スカイツリーが、約17キロ隔てたわが家からもしっかり見える高さになった。昨今の日本では数少ない「順調」の一つである。東京タワーが高度成長なら、この塔は何のシンボルとして記憶に刻まれようか▼一部を除く9月23日付の朝刊に〈地上470メートルの競演〉なる写真が載った。ツリー最上部にかかる中秋の名月である。上空での建設作業と月の軌跡の一瞬の交差を、600ミリの望遠レンズでとらえた▼科学記者の計算をもとに選んだ撮影地は、西に4キロ離れた東大校舎の屋上だ。月はツリーの左下から右上へと夕空を駆け上がり、わずか8秒だが先端に「乗った」。撮った関口聡カメラマンがいう。「この秋限りの旬な光景を残せると興奮しました」▼手前みその一枚を含め、新聞社や通信社による約280点で今年を顧みる報道写真展が、東京・日本橋の三越本店で始まった(無料、26日まで)。急ぎ足で会場を回って、政治の沈滞をスポーツと宇宙が埋め合わせた年だと思った▼首相職を2人でつなぐこと5年連続、もはや奇習である。永田町の仏頂面に比べて、虹を背にグリーンに立つ石川遼君のすがすがしいことよ。日食も負けていない。欠けたまま海に没する「三日月の太陽」を沖縄で収めた▼開会式に招かれた宇宙飛行士の山崎直子さんが、しばし見入ったパネルがある。オーストラリアの星空で燃え尽きた「はやぶさ」だ。「ただいま」の閃光(せんこう)を残して天の川に砕け散る探査機。地平線に棚引く雲たちが「おかえり」と迎えている。何度も泣かせる機械である。

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