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「諫早」上告断念 見切り発車の開門では困る(12月16日付・読売社説)

 長崎県の国営諫早湾干拓事業を巡り、潮受け堤防の排水門を5年間開放するよう国に命じた福岡高裁判決について、菅首相が最高裁への上告を断念する方針を示した。

 判決は確定し、門は2012年度にも開放される見通しだ。

 地元を二分する対立が続いてきた問題に一定の方向性を示したものだが、開門の影響を十分検討したうえでの決断だったか、疑問が残ると言わざるをえない。

 首相は野党時代から諫早湾干拓事業の見直しを主張し、上告断念についても「私なりの知見を持っている。開門で海をきれいにしていこうという訴訟での高裁判断は非常に重い」と説明した。

 しかし、事業を実施する農林水産省は現在、開門の適否を判断する環境影響評価を進めており、訴訟では上告を求めていた。それを押し切っての判断である。政治主導に名を借りた見切り発車とならないだろうか。

 1989年に着工した諫早湾干拓は、有明海の一角を占める諫早湾を全長7キロの堤防で閉め切り、内側に干拓地と調整池を整備する事業で、08年に完成した。

 事業を巡っては早くから漁業者と農業者、周辺自治体、その選出議員らがそれぞれの利害を主張し、迷走を続けた経緯がある。

 完成後、焦点となったのが排水門の開放問題だ。湾を堤防で閉め切った影響で漁獲量が減少したとする漁業者は開門を強く求めた。一方、干拓地の農業者は開門すれば堤防内に海水が流入し、営農できなくなると反対してきた。

 高裁判決は、堤防の閉め切りと漁業被害の因果関係を認め、門を開けても農業や防災への影響は限定的との見解を示した。

 だが今後、排水門を常時開放した場合に不測の事態が起きる可能性は否定できまい。

 調整池の汚泥などが堤防外に流出して周辺海域の水質が悪化し、漁業への悪影響はないか。洪水や高潮が発生した際の防災対策は万全か。農業用水として使う新たな水源確保はどうする――といった点である。

 高裁判決は国に準備期間として3年間の猶予を与えた。政府は想定される様々な状況を点検し、開門の時期や方法などを慎重に検討しなければならない。

 今後、開門反対派の長崎県や農業者側の反発はますます強まるだろう。地元の同意を得ずに開門を強行するわけにはいくまい。首相は地元関係者との調整や説得についても責任を持つ必要がある。

2010年12月16日01時36分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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