HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 15 Dec 2010 21:12:37 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:その島では、フリージアに似た小さな花が、夜になると芳香を放…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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2010年12月15日

 その島では、フリージアに似た小さな花が、夜になると芳香を放った。陸軍少尉の平川良雄さんは「待夜草」と名付け一句詠んだ。<待夜草香りほのかに雨の音>。やがて、日米両軍で二万七千人が戦死する硫黄島である▼福岡県で酒造工場を経営していた四十二歳の平川さんに、召集令状が届いたのは一九四四年二月。硫黄島では、栄養失調を防ぐ食品工場の責任者を務めたが、四五年三月に戦死した▼七年前、九十九歳で亡くなった妻なる子さんの遺品から、孤島から家族を思う三十四通の手紙と、なる子さんの当時の日記が見つかり、この秋、次男の二朗さんが『もうひとつの硫黄島』として一冊の本にまとめた▼「玉砕」を知った妻の悲痛な叫びが胸を打つ。<硫黄島/おそろしきかな/硫黄島/地獄の島/米兵に取り囲まれし/あはれなる島/玉と散りにし/君等の不滅の地/護国の柱とはいへ/むざんなり/硫黄島/砕けたり/うらみをこめて>▼菅直人首相はきのう、戦没者の慰霊と遺骨収集作業の視察のため、硫黄島を訪問した。現職首相としては二〇〇五年の小泉純一郎氏以来でわずか二人目である▼放置されたままの遺骨は約一万三千柱。首相の「特命チーム」が米軍記録から集団埋葬地を確認、発掘作業を進めている。迷走が続く菅内閣で評価できる数少ない事業だ。中途半端に終わらせてほしくない。

 

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