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個人課税強化 高所得層狙い撃ちは筋が違う(12月15日付・読売社説)

 政府税制調査会は、2011年度税制改正大綱に盛り込む所得税や相続税など個人向け課税の見直し案を決めた。

 個人の税負担を軽くするため、収入から一定額を差し引いている様々な控除の額を小さくして、国の税収を4700億円ほど増やす内容だ。厳しい財政事情を考えれば、控除の見直し自体は必要な措置であろう。

 しかし今回、「増税」の対象は高所得者に集中している。税金を負担する能力が高い層ばかりを狙い撃ちにしたやり方は、公平性を欠くだけでなく、人々の働く意欲や経済の活力を失わせる副作用が大きいと言わざるを得ない。

 高所得者への課税強化は、例えば、会社員の給料の一定額を必要経費と見なして差し引く給与所得控除に上限を設定することだ。

 年収に応じて控除額が増える仕組みを改め、年収1500万円超の人は控除額を一律にする。報酬が高い企業役員の控除額は、一般社員よりさらに圧縮する。

 また、23〜69歳の親族を扶養する人に対する成年扶養控除は、年収が689万円を超えれば、原則として受けられなくなる。

 相続税も、遺産から差し引ける基礎控除額を現状より4割減らして、課税対象者を増やす。

 税調幹部は「所得再分配機能を強め、格差を是正するため」と説明する。だが、実際は、高所得者の方が中低所得者より課税強化への反発が少ないという現実を見越してのことではないか。

 負担が増えるのは、給与所得控除でサラリーマン全体の1%に過ぎず、成年扶養控除でも適用されている人の2割にとどまる。

 しかし、現在でも高所得者の負担が軽いとは言えまい。夫婦と子ども2人で年収500万円の世帯は、所得税と住民税の負担が19・5万円なのに対し、1000万円の世帯は113万円だ。収入は2倍でも、負担額は6倍近い。

 所得税が課される最低年収は325万円で、米英独などの先進各国を上回る水準だ。

 中低所得者への配慮は必要だが、富裕層に負担増を求めるだけの税制改正では、日本経済を支える優秀で高収入の人材が税金の安い海外に流出する、といったマイナスの効果を生む恐れもある。

 今回の控除見直しは、子ども手当増額など、ばらまき政策のツケを高所得層に押し付けた形で、税制の抜本改革につながるものではない。公平な税負担を実現するためにも、消費税率引き上げなどに早急に取り組むべきであろう。

2010年12月15日01時21分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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