<言わなくてもよいことを黙っていれば、いつも得をする>とは、中国の格言だ。居丈高な妨害工作などをせずに沈黙していれば、中国政府が国際社会からここまで批判を浴びることもなかっただろう▼中国の民主活動家・劉暁波氏に対するノーベル平和賞の授賞式は、獄中の劉氏の代理として賞を受ける人もない「誰も座らない椅子」が注目を浴びる異例の式典だった▼踏み絵を迫るような中国政府の激しい「反平和賞キャンペーン」に呼応し、授賞式を欠席した国は十七カ国もあった。共通点は自由な言論が制限されている国が多いということだ▼民族問題など人権抑圧が、国際的に問題視されている国が目立つ。出席国の中でも、中国との経済関係から出席をためらった国もあったのではないか▼茶番劇の極みは、大学教授らが創設したという「孔子平和賞」だ。授賞を通知されていない台湾の連戦元副総統は当然ながら授賞式に出席しなかった。代理として賞金を受け取った北京市内の女子児童は、連戦氏の「名前も知らない」と話したという▼<自由な中国の到来を楽観している>。式典では、劉氏の裁判用の論文「私に敵はいない」が代読された。祖国のために、沈黙しないという凜(りん)とした意志を思う時、経済力を背景に各国に圧力をかけ、テレビを遮断して国民に何も知らせない大国の姿のなんと小さなことか。