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〈はらはらと黄の冬ばらの崩れ去るかりそめならぬことの如(ごと)くに〉。窪田空穂(うつぼ)は花の末期を美しく詠んだ。その時限りを表す「仮初(かりそめ)」は趣のある言葉だ。仮初人(びと)、仮初の恋……。しかし仮初の権力は危ない。素人が振り回すと民が迷惑する▼「今までは仮免許だったが、いよいよ本免許。菅直人らしさを出していきたい」。支持者の会合で首相が語ったそうだ。では、仮初の一票と仮初の税金を返してくれ、と言いたい人も多かろう▼半年とはいえ、仮免に日本の針路を任せていたかと思うと空恐ろしい。教習中でも、大型ダンプや暴走車に出合う。東アジアの情勢が緊迫するなか、また、民主党らしさが問われる予算作りを前に、のんきなことを言うものではない▼仮免には急ブレーキが付き物というわけで、本紙の世論調査で菅内閣の支持率が21%まで落ちた。地方選挙は負けが続き、おとといの茨城県議選では候補者の4分の3が落選の憂き目を見た。そこに執行部が望んだかのような、党内抗争の再燃である▼小沢元代表に国会で説明を求めるかどうかで、分裂含みの緊張が高まってきた。もともと「脱小沢」「親小沢」その他の寄り合い所帯。何両かが連なり、きしみ合う特殊車両を操るには、なるほど仮免では荷が重い▼仮という字には、間に合わせ、偽物の意味がある。政権交代後の混迷は、本物の政治が根づくまでの仮の姿と思いたい。とても時宜ではないのだが、大政党の液状化が避けられないのなら早く溶け、さっさとあるべき姿に固まり直してもらうしかない。