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地球温暖化防止策をめぐる国際交渉は相互の不信感が和らぎ、メキシコで息を吹き返した。米国や中国も加わる新たな枠組みづくりに向け、来年の交渉が正念場となる。カンクン会議(C[記事全文]
政治が党派的な利害を超えて取り組むべき重要な課題がある。今後の社会保障の姿とその財源をどう確保するか。給付と負担のありようを、国民本位で考えることだ。[記事全文]
地球温暖化防止策をめぐる国際交渉は相互の不信感が和らぎ、メキシコで息を吹き返した。米国や中国も加わる新たな枠組みづくりに向け、来年の交渉が正念場となる。
カンクン会議(COP16)は、もともと控えめに「次につなぐ」ことを目指した。それが貴重な成果を生み出したといえる。
具体的な目標は二つだった。交渉を正常化することと、京都議定書の第1期の温室効果ガスの削減目標が終わる2012年の後に「規制の空白期」をつくらないための仕組みづくりだ。
議長を務めたエスピノサ・メキシコ外相は、「隠された文書も秘密の交渉もない」と、透明性重視のていねいな運営に徹した。昨年のコペンハーゲン会議(COP15)の教訓を生かした方式である。
COP15では、米国のオバマ大統領ら主要国首脳が達した合意に、一部の国から「非公式の場でつくった」と批判の声が上がり、正式決定直前でつまずいた。今回、成果を生んだ背景には「失敗すれば決定的な痛手になる」という危機感があった。
「カンクン合意」は極めて幅が広い。長期目標では温度上昇を2度以内に抑えることなどが記され、資金援助の新制度設立や途上国の削減行動の検証法も詳しく決まった。昨年のコペンハーゲン合意に従って各国が事務局に報告している独自の削減目標を重要視する、とされた。
まさに「コペンハーゲン合意」が、より詳細になって再登場した形だ。この合意は、温暖化交渉を新しい段階に押し出す一歩になるだろう。
京都議定書については、「空白をつくらないこと」とされた。空白を避けるにはCOP17(南アフリカ)で新しい枠組みを決める必要がある。簡単ではないが、熱い交渉の1年になる。
米国も中国も、現行の京都議定書の枠組みに参加していないため削減義務がない。両国を含む新たな枠組みの検討を早め、COP17で一定の結論を出さねばならない。
この枠組みは京都議定書のようなものなのか、全く別のものなのかを決めることも大切だ。
温暖化対策は「不公平感」との闘いだ。京都議定書では先進国だけが削減目標をもった。その後、米国が勝手に離脱し、中国が世界一の排出国になり、2大排出国が削減義務をもたないことで不公平感が一層強まった。
だが、解決策は規制を前に進める中でしか生まれない。広範な国々に規制の網をかけ、次第に公平な規制に発展させるやり方がよいのではないか。
日本も京都議定書での削減義務に不公平感を抱く国だ。枠組みづくりに積極的に貢献する中で、公平さを実現すべきだろう。
政治が党派的な利害を超えて取り組むべき重要な課題がある。
今後の社会保障の姿とその財源をどう確保するか。給付と負担のありようを、国民本位で考えることだ。
菅政権と民主党は、社会保障と税制の一体改革を進めるうえでの基本的な考えをまとめた。
その軸になっている有識者検討会の報告では、消費税を社会保障制度の基幹財源の一つであると明示した。同時に、給付と負担の関係を個人ごとに見えやすくする共通番号制度の導入も打ち出した。
社会保障の高齢者偏重主義を改め、雇用や貧困問題、子育てなどを重視することも新方針として盛り込んだ。負担感がつのる若い世代への支援を強化し、納得が得られる仕組みをつくっていくという姿勢である。
こうした方向づけは、いずれも妥当なものであるといえよう。
年金などの現金給付に重点を置くか、それともサービスなどの現物給付に軸足を置いていくのか。教育政策との連係はどうするか。議論不足の点も目につくが、そこはむしろ今後の課題として、開かれた検討の場で議論を深めていってもらいたい。
社会保障の給付と負担のあるべき姿については、専門家などの議論は出尽くした感すらある。いま問われているのは、実現に向けた政治全体としての力量ではあるまいか。
その点、今回の報告では野党への配慮が目立っている。具体的な数字はなるべく入れず、選挙公約などで民主党が示してきた独自の年金改革案などへの言及も避けた。
しかも2008年の「社会保障国民会議」や09年の「安心社会実現会議」といった自公政権時代の議論を踏まえた内容であることを強調。社会保障や税の問題を政争の具にしないよう、早期に常設会議を設けるよう提案し、「与野党協議へ」の思いが強くにじみ出ている。
与野党間の協議を通じて超党派の合意をつくり出すことが国民の利益にかなう、という視点に立ってのことでもあろう。大いに評価できる。
政権交代が現実のものになった。首相が短期間で交代している現実もある。社会保障制度の再構築について、与党が入れ替わるたびに方針が変わるのでは、大がかりな改革はできない。財源の確保を軸とする安定的な制度づくりは困難をきわめる。
むろん、与野党協議の場作りは一筋縄ではいかない。05年には、年金改革をめぐる協議の場が国会内に設けられたが、選挙戦を前に自然消滅してしまった経緯がある。
だが、社会保障と税の一体改革は待ったなしの状況だ。未来世代への責任感を、政治全体で共有してほしい。