HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Fri, 10 Dec 2010 03:10:30 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:高齢者医療 見直しは時間をかけて:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

高齢者医療 見直しは時間をかけて

2010年12月10日

 厚生労働省が公表した後期高齢者医療制度改革の最終案は、高齢者の負担軽減を現役世代の負担増で補おうとの姿勢が目立つ。「初めに現行制度の廃止ありき」ではなく、十分に議論を尽くすべきだ。

 二〇〇八年四月にスタートした高齢者医療制度は、七十五歳以上の高齢者を一律に加入させたことで「年齢による差別」などと批判を浴びた。新制度案は年齢区分の解消を最大の狙いにしていた。

 七十五歳以上のうち無職や自営業者は市町村国民健康保険(国保)、現役でサラリーマンとして働いていたり、子供の扶養家族になり得る場合には、健康保険組合などに加入する。

 だが、新たな問題が生じる。例えば低年金の独居高齢者は、国保の保険料を支払わなければならないが、サラリーマンの子供の扶養家族になれば保険料を免れる。この高齢者間の不公平は現行制度の発足と同時に解消されたが、新制度案では復活するのだ。

 最終案はこの点を全く無視している。都合が悪い点を頬かむりしていると言わざるをえない。

 高齢者の大半が戻ることになる国保では、高齢者の医療費は七十五歳以上と七十四歳以下とは別勘定にするため、七十五歳の線引きは残ったままになり、現行制度と本質的に何も変わらず「看板の掛け替え」に終わってしまう。

 現在、国保、高齢者制度が別々の保険証を使っているが、新制度案の利点は「同じ保険証で済む」ことぐらいだ。

 民主党が政権公約で掲げた「後期高齢者医療制度の廃止」を国民にアピールするために急ごしらえでつくった案だからだろう。

 新制度案が高齢者の負担軽減を目指すのはわかるが、財源が現役世代の負担増中心では能がない。

 確かに若い世代が多い健保、共済組合は、低所得・高齢者が多い国保よりも財政的余裕があり、国保救済のためにある程度の「支援金」の拠出はやむを得ない。

 とはいえ「支援金」の増加に耐え切れずに解散する健保組合が急増しているように、負担の付け回しも限界にきている。

 結局、新制度をどのような形にするかは財源の問題に行き着く。

 現行、新制度案のいずれも高齢者医療費の半分は税で賄っている。負担割合を増やすことができれば新制度の形態自体が変わる。

 政府内では税と社会保障をめぐる議論がようやく始まった。高齢者医療制度の抜本的見直しはその結論を待ってからでも遅くない。

 

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