HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 09 Dec 2010 21:10:25 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:国際学力調査 順位に一喜一憂でなく:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

国際学力調査 順位に一喜一憂でなく

2010年12月9日

 経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)で日本の成績が上がった。だが順位だけに目を奪われては子どもの秘めた力を見落とす。真摯(しんし)に向き合うべき課題も浮かび上がった。

 PISAは十五歳を対象に二〇〇〇年から三年ごとに実施されている。小中学校で身に付けた知識や技能を使って実生活の中で考え、生かす力をみる。読解力、数学的応用力、科学的応用力の三分野で試される。

 〇九年の結果だと、日本の読解力は〇六年の十五位から八位に回復した。数学は九位、科学は五位といずれも一つ上がった。

 学力低下を招いたと批判されたゆとり教育を修正し、基礎・基本を固めて応用力を培う取り組みが奏功したと文部科学省はみる。今回の調査に参加した高校一年生は、PISAを意識して三年前に復活した全国学力調査を中学三年生のときに受けている。

 高木義明文科相は「学力は改善傾向にある」と言う。だが一方では、国を挙げての“受験対策”が軌道に乗り始めただけだ。順位にこだわるのなら全国学力調査でトップを誇る秋田県が参加してはどうか。そう皮肉る見方もある。

 PISAはグローバル経済社会で生きていく力の一断面をつかもうというペーパーテストだ。初めて参加した中国の上海はいきなり三分野で首位を独占した。シンガポールや韓国なども上位で躍進するアジアの力を示している。

 日本ではいくつかの課題が浮き彫りになった。学力の高い層が増えて低い層が減ったが、上位の国と比べて成績の良い子と悪い子の二極化が依然目立つ。背後には所得格差の問題が潜んでいる。

 本や新聞に慣れ親しんでいる子は、そうでない子より成績が上回った。だが読書を趣味とする子は少ない。学校では朝の読書活動が盛んだが、進んで読書を楽しませるにはどうするか。学ぶ意欲をかき立てる突破口になろう。

 小中学校では来春以降、授業時間が増えて厚い教科書を使う。すべてを消化しようとして、考えたり、表現したりする力が養えないのでは、本末転倒だ。授業をどう工夫するか先生の力量がますます問われる。

 PISAで浮かんだ課題をどう解消するか。子どもたちが知識や技能を実践し、鍛え上げることができる現場を地域や学校、家庭でどうつくり出すか。教育政策の出番はそこにこそある。順位に一喜一憂する必要はない。

 

この記事を印刷する





おすすめサイト

ads by adingo