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12月9日付 編集手帳

 のちに六代目海老蔵から八代目団十郎を襲名する市川新之助が生まれたのは、江戸の文政年間である。数か月して出た『役者神事(しんじ)(くらべ)』という評判番付に〈上上吉(じょうじょうきち) 市川新之助〉と載った。0歳児の人気役者である◆歌舞伎の市川宗家に跡継ぎの生まれることが、江戸庶民のいかに大きな関心事であったかが分かる。いまの十一代目海老蔵さん(33)も、そういうまばゆい系譜の連なりに身を置いている◆八代目団十郎は吐いた(たん)までが「団十郎様御痰(おたん)」として熱狂ファンのお守りになったと伝えられるが、若き海老蔵さんもこれから数々の人気伝説をこしらえていく人だろう。芳しからぬ伝説の先行したことが残念でならない◆酒に酔ってのトラブルで顔を殴られ、大けがをした海老蔵さんが歌舞伎の出演を無期限で自粛することになった。エッセイスト関容子さんの著書『海老蔵そして團十郎』(文芸春秋)によれば、父親の十二代目団十郎さん(64)は常日頃、わが子に教え諭してきたという。〈自惚(うぬぼ)れというのは足音がしないんだ〉◆親の小言と冷や酒はすぐに効かずにあとで効く。父親の言葉が傷にしみるだろう。

2010年12月9日01時26分  読売新聞)
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