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諫早湾干拓訴訟 「開門」命令が問う政治の責任(12月8日付・読売社説)

 国の諫早湾干拓事業を巡り、漁業者側が潮受け堤防排水門の開放などを求めた訴訟で、福岡高裁は事業の影響調査のため5年間、堤防を常時開放するよう国に命じる判決を言い渡した。

 堤防の閉め切りと、漁獲高が減少するなどの漁業被害との因果関係を明確に認めた。堤防閉め切りが地元漁業者の漁業を営む権利を侵害しているとも指摘した。

 1審の佐賀地裁と同様、漁業者側の主張をほぼ全面的に認めた判決と言えよう。

 国側は、開門すれば高潮や洪水時に堤防の防災機能が失われ、堤防内の調整池に海水が入り込んで干拓地農業にも被害が出ると主張していた。地元長崎県や干拓地農家の意向を踏まえたものだ。

 しかし判決は「影響は限定的」と、これを退けた。

 開門の準備に3年間の猶予を与えた上で、とりあえず排水門を開け、有明海の環境に及ぼす影響や漁業資源の回復策などを5年間で探れ、と命じた判決である。

 干拓事業は、有明海の一角である諫早湾を全長7キロの潮受け堤防でせき止め、内側に広大な調整池と農地を造成した。1989年に着工、総額2500億円を投じて2008年に事業は完成した。

 干拓による環境変化で魚介類が減少したとする漁業者側は、まず工事の差し止めを求めたが敗訴した。事業が完成した後は、堤防の撤去や排水門の開放などを求める訴訟で国と争ってきた。

 干拓地農家の不安、長崎県や有明海に臨む周辺各県の思惑なども絡み合う中、「諫早問題」が混迷を深めた背景には二転三転した政治の対応のまずさもあろう。

 自民党政権は、地方への利益誘導を狙って大型公共事業を乱発した。諫早湾干拓もその一つだ。

 民主党は、有明海を再生するとして野党時代から開門に前向きだった。政権交代後の今年4月には、政府・与党の検討委員会が開門を妥当とする報告書をまとめた。

 しかし、検討委を主導した当時の赤松農林水産相が宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題を機に退任した後は、この問題から遠ざかっている。

 農水省は、開門の適否を判断する環境影響評価を進めており、来春に報告をまとめる方針だ。

 判決を受けて仙谷官房長官は、開門に前向きな姿勢を示しつつ、環境影響評価の結果も踏まえて検討する意向を表明した。

 最終的な判断は政治に委ねられる。漁業者と農家、双方に配慮した解決策を探る責任があろう。

2010年12月8日00時57分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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