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歌手のクミコさん(56)にお会いした。暮れのNHK紅白歌合戦で「INORI」を歌う。広島市の平和記念公園に立つ原爆の子の像。そのモデルとなった佐々木禎子(さだこ)さんを悼み、静かに平和を訴える曲だ▼禎子さんは2歳で被爆、10年後に白血病で亡くなった。回復を念じて鶴を折り続けた話は広く知られる。「彼女の短い人生を借りて、戦没者の無数の思いを伝えたい。歌い手の使命を感じます」。納めの舞台、音符の一つ一つで鶴を折り、世界へ、天へと飛ばす▼69年前のきょう、日本は太平洋戦争に突入した。真珠湾から広島、長崎に至る44カ月、日本人だけでも300余万の命が失われ、被爆者の苦痛は今も続いている。どこかで戻る道はなかったかと、今さらながら思う▼陸軍は米英と戦う決意を夏に固め、陸相の東条英機が首相になると開戦内閣だと喜んだ。海軍も覚悟を決める。「戦うも亡国かもしれぬが、戦わずしての亡国は魂までも喪失する永久の亡国である」(永野修身(おさ・み)軍令部総長)▼民のあずかり知らない「亡国覚悟」の戦いに、新聞や知識人も加担した。内外に息苦しさが募る日本に、今また勇ましい言説が飛び交う。いつか来た道にはさせないと、改めて折り鶴の少女に誓いたい▼本日はジョン・レノン暗殺から30年でもある。〈皆が新しいテレビの代わりに平和を求めれば、それはなる〉の至言を思う。戦争も平和も、つまりは人の意思である。皆がテレビを買い替えた年、同じ力強さで平和の輪が広がるよう祈りながら、除夜の熱唱に聴き入るとする。