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2010年12月8日(水)付

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朝鮮半島―外交で打開する以外ない

北朝鮮による砲撃後の緊張を抑えようと、関係する国々の動きが慌ただしくなった。ワシントンに韓国と日本、米国の外相が集まった。その前日には中国と米国の首脳が電話で話し合った[記事全文]

国際学力調査―根づいたか「未来型学力」

各国の15歳(高校1年生)が参加する学習到達度調査(PISA)の昨年の結果が、公表された。日本の子が苦手とされてきた「読解力」の分野で、国別順位が改善したのが目を引く。[記事全文]

朝鮮半島―外交で打開する以外ない

 北朝鮮による砲撃後の緊張を抑えようと、関係する国々の動きが慌ただしくなった。

 ワシントンに韓国と日本、米国の外相が集まった。その前日には中国と米国の首脳が電話で話し合った。

 あらゆる機会と窓口を生かし、打開の知恵を探るのは当然である。

 日米韓の外相は共同声明で、砲撃と新たな核開発につながる北朝鮮のウラン濃縮を強く非難した。3カ国の結束を強調したうえで、「中国の努力を期待する」と表明した。

 3カ国は北朝鮮にかなりの経済制裁を科しているが、事態はいっこうに好転しない。ここは中国に頼らねばならない。そんな現実の反映だろう。

 胡錦濤国家主席は、電話でオバマ大統領に対し「処置を誤れば、朝鮮半島に制御できない状況を招きかねない」と警戒感をあらわにした。

 ならば、北朝鮮がさらに挑発に出ないよう、まず中国に説得を強めてもらわねばならない。特使を平壌に送り、金正日総書記と直談判して、胡主席の懸念を伝えてはどうか。

 韓国では、感情が北朝鮮に対して強硬論に傾きがちだ。抑制した姿勢を保ってもらいたい。

 韓国軍は今、砲撃訓練をしている。予定海域に南北境界近くの微妙なところも含まれる。北朝鮮に新たな動きをさせない範囲の演習が求められる。

 米国は来週、政府代表団を中国などに派遣する計画だという。日本も外務省幹部が中国、ロシアを回る。

 大切なのはそういう外交努力だ。

 米国は今月、国連安保理の議長国である。当面、砲撃とウラン濃縮に対する国際社会のメッセージを出せるように、調整に努めるべきだろう。

 同時に北朝鮮を取り込み、緊張から対話、交渉の局面にいかに持ってゆくか。それができてこそ、中国が提案する南北朝鮮と日米中ロの6者による緊急会合に、大きな意味が出てくる。

 その先の課題として、北朝鮮の核問題解決をめざす6者協議の本会合にどうつなげるか。構想力と粘り強い実行力が各国に問われている。

 それにしても、このところ日本と韓国の「防衛協力」が目立つ。

 これまで親善交流や救難訓練をしてきたが、7月の米韓合同軍事演習には自衛隊幹部、そして進行中の日米演習には韓国軍幹部が、それぞれ初めてオブザーバー参加した。防衛関連の情報共有をめぐる意見交換も始まった。

 相次ぐ北朝鮮の軍事行動と体制不安がそれを促したとはいえ、日本の朝鮮半島支配の歴史と、自衛隊への韓国の厳しい視線からすれば、いままで考えられなかったほどの変化だ。

 北朝鮮情勢の急変に備え、日米同盟と米韓同盟を軸にして日韓の間も情報を密にするのは必要なことである。

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国際学力調査―根づいたか「未来型学力」

 各国の15歳(高校1年生)が参加する学習到達度調査(PISA)の昨年の結果が、公表された。日本の子が苦手とされてきた「読解力」の分野で、国別順位が改善したのが目を引く。

 10年前に始まったPISAでは、日本の順位低下が続いていた。政府の新成長戦略でも「世界トップレベルの順位をめざす」と書き込まれた。文部科学省は、一連の政策が功を奏したと、胸をなでおろしたことだろう。

 だが、21世紀を生き抜くための力が日本の子どもたちに備わってきたと、本当に喜んでよいだろうか。

 このテストは、情報化・グローバル化が進んだ時代に必要な学力の国際指標といってよい。学んだ知識や技能を使い、実生活で出くわす場面をどう切り開くか、を問う。日本が得意としてきた知識の積み上げだけでは、なかなか身につかない力だ。

 日本の子の読解力の点数は、確かに上がった。だが、文章の中のいくつかの情報を関連づけたり、自分の知識や経験と結びつけたりするのは、やや難ありと指摘されている。別の質問調査では、ネット上で討論に参加したり、生活情報を検索したりする生徒は、各国平均より少ないと分かった。

 与えられたものは的確に読み取れるが、言葉という道具を駆使して他人と交わり、考えを深め、社会に役立ててゆくような力強さはまだまだ。そんな日本の子の姿が浮かぶ。

 この10年、様々な学力向上策がとられてきた。まずやり玉に挙がったのが「ゆとり教育」だ。基礎・基本の知識を固め直そうと、学びの量を増やす方向に急激にカジが切られた。3年前には全国学力調査が復活。点数を競い合う空気も強まった。

 一方、PISA型学力や読解力を意識した取り組みも進められた。新しい学習指導要領は「生きる力」を掲げ、応用力や表現力を伸ばせ、と説く。全国学力調査では、PISAとよく似た「活用」問題が出題されている。

 「必要な学力とは何か」をめぐり、教育現場は振り回されてきた。この間のどんな努力が結果に結びつき、まだ何が足りないか。今こそ詳しい検証と整理とが必要だろう。

 読解力対策として「朝読書」の活動が広がっている。今回の調査でも読書が身近になったのはうかがえた。冊数を競うだけでなく、感想を話し合い、違う意見もとりいれて発表する。そんな学びを大いに進めたい。

 来春から小学校で使われる教科書はぐんと厚くなる。増えた分量を教え込むのに時間をとられては、考える力をつけさせる余裕はなくなる。教科書の使い方や教科を横断するような形式の授業にも、工夫が必要だ。

 未来に向けて腰を落ち着け、学びの質を変えてゆくときだろう。

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