HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 07 Dec 2010 00:12:35 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:警察資料流出 警視庁は被害者なのか:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

警察資料流出 警視庁は被害者なのか

2010年12月7日

 テロ捜査の警察資料とみられる情報が流出して一カ月余り。警視庁は強制捜査を始めたが、まるで被害者は自分たちだと言わんばかりの事件の見立てだ。大事なのは責任の自覚と被害者への謝罪だ。

 インターネットに流出した内部資料は警視庁公安部外事三課などで作られたとされ、今でも拡散を続けている。ファイル交換ソフトを介して二十を超える国や地域で一万人以上が入手したという。

 流出元を調べている警視庁は任意での協力を得られなかったとして、国内の接続業者二社の契約者情報と接続記録を差し押さえた。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の直前に資料を流出させ、警備の邪魔をしたという偽計業務妨害の疑いだ。長期間たってからの強制捜査は、警察当局の危機管理の在り方として遅きに失したと言わざるを得ない。

 しかも、この事件の筋立てだと、警察の内部資料の漏洩(ろうえい)行為そのものの責任を問うのではなく、警視庁はあくまで被害者だと主張しているに等しい。容疑者の身元が分からないからとはいえ、流出資料を警察のものと公式に認めないことを前提としたような捜査のやり方では責任転嫁に映る。

 捜査対象者や捜査協力者として資料に掲載され、写真や名前、住所といった個人情報が世界中に暴露され続けている人たちの被害の大きさは計り知れない。

 警視庁が自らの責任を明らかにせず、手をこまねいているうちに資料を丸ごと載せた本まで出版された。個人情報を記載されたイスラム教徒らの申し立てで東京地裁は、都内の出版社に対して出版を差し止める仮処分を決定した。

 憲法が定める表現の自由は最大限尊重されなければならない。だが出版は公益目的にかなわず、プライバシー権を侵害して回復できない損害を与える恐れがあるとした地裁の判断はうなずける。出版社は決定の趣旨をくむべきだ。

 警視庁が資料の真偽をはっきりさせない背景に、諸外国の治安機関の信用を失うとの心配があるようだ。そのために捜査協力者らの安全確保がおろそかになり、資料が転載されたサイトの削除を要請できず、本の出版に抗議できなかったとすれば、もはや加害者と呼ばれても仕方がない。

 事件の全容解明と再発防止に全力を挙げるべきなのは当然だ。それと併せて、失態と向き合い、非を認めて謝罪しないのであれば国内外の信頼回復は望めまい。

 

この記事を印刷する





おすすめサイト

ads by adingo