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見せ物小屋は万事おおらかだった。〈目が三つ、大きな歯が二枚の化け物〉を恐る恐るのぞくと、ただのゲタ。「さあ大イタチだ」の声に負けて入れば、紅を流した板が飾られている。「板血」である。お客も「うまいこと考えたな」と寛大だった。『明治のおもかげ』=鶯亭金升(おうてい・きんしょう)著=から▼「さあ政権交代だ」の呼び込みに胸を躍らせ、千客が木戸をくぐって1年あまり。私たちが見せられたのは、国政の後ずさりだった。「これがホントの政権後退」と言われ、笑って許す有権者はいまい▼菅内閣も明日で半年になる。普天間、政治とカネの負の遺産に、参院選大敗、党を二分しての代表選、閣僚の失言が重なり、自壊の道をゆく。「一兵卒」さえ国会に呼び出せない体たらくだ▼尖閣諸島や朝鮮半島で国益や安保絡みの凶事があるたび、政権は内外に覚悟を示すどころか、右往左往している。総じて、自民党の病巣を残して去勢した印象である。景気に財政、雇用や福祉にも吉兆は乏しい▼菅さんは「忙しすぎて私の発信が不十分だった」と省みた。多忙を恨んではいけない。就任わずか半年、リーダーシップを見せつけるチャンスにこれほど恵まれた首相を知らない。なのに見逃し三振ばかり。せめて振ってくれないと▼「さっぱり」な政権への評価は、「がっかり」と「やっぱり」が半々か。縁日の小屋ならば、看板に偽りありも「また担がれた」で済むが、国政の桟敷(さじき)を包むのは「金返せ」の怒号だ。世の流れの速さ、国を洗う大波を思えば、「時を返せ」かもしれない。