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2010年12月7日(火)付

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子ども手当―ドタバタ劇は今年限りに

看板施策なのに、肝心の財源確保が後手に回っているとは。子どもらに恥ずかしくはないか。菅政権は、月額1万3千円の子ども手当を3歳未満について来年度から7千円上積みすると決[記事全文]

諫早湾干拓―開門を決断するときだ

福岡、佐賀、長崎、熊本の4県に囲まれた有明海。その一角にある諫早湾の干潟をつぶしてできた農林水産省の干拓事業が大きな岐路を迎えた。干拓地をつくるために諫早湾を堤防で閉ざ[記事全文]

子ども手当―ドタバタ劇は今年限りに

 看板施策なのに、肝心の財源確保が後手に回っているとは。子どもらに恥ずかしくはないか。

 菅政権は、月額1万3千円の子ども手当を3歳未満について来年度から7千円上積みすると決めた。

 来年以降の年少扶養控除廃止の影響で、旧来の児童手当と比べて手取り額が減るのを防ぐためだ。これは必要な措置といえるだろう。

 ところが、必要な財源2450億円を手当てできていない。このため、税負担を軽くしている控除制度を見直す案が検討されてきた。

 ひとつは23〜69歳を対象にした成年扶養控除の縮小だ。年収約568万円を超える世帯は使えなくする。働きたくても働けない人に配慮すべきだとの意見には耳を傾けたいが、有力な選択肢である。

 もう一つは、主に専業主婦世帯が対象の配偶者控除である。年収103万円以下の配偶者がいる世帯は、納税者の所得から原則38万円を差し引ける制度だが、年収約1230万円超の世帯はこの制度の対象からはずすかどうかで対立がある。

 低所得層に控除を残せば、所得再配分を強める意味で一定の合理性があるのではないか。だが、民主党内には慎重論が根強い。

 政府税制調査会によると、年収が高いほど控除を使う人の割合が高い。妻が働かなくても生活を維持できる世帯で控除が使われていると見られる。

 一方、夫の収入が低いほど、妻の就労割合は高いとされる。家計を支えるため共働きが必要な世帯では控除が使われない傾向がうかがえる。

 こうした状況を考えると、負担能力が高い人により多くの税金を負担してもらうという解決策には、それなりの説得力があるといえよう。

 配偶者の収入が103万超〜141万円の場合に適用される配偶者特別控除にも同様の所得制限がある。そのことからも、理解を得られやすい面があるのではないか。

 7千円の上乗せを裏打ちする恒久財源は不可欠なものだ。特別会計などの「埋蔵金」では一時的な財源にしかならない。これ以上の赤字国債頼みは到底許されない。来春の統一地方選を前に負担増は避けたい、といった政治的思惑など論外である。

 今の子ども世代に対する支援にかかる負担を将来に先送りしてよいはずがない。今年度から始まった子ども手当自体、実質的には借金頼みだったことも考えれば、なおさらだ。

 現金給付だけでなく、保育サービスなどの現物給付を充実し、子育て支援を強化したい。それには消費税を含む抜本的な税制改革で財源を調達するのが基本だ。その場しのぎの策は、もう限界に達している。

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諫早湾干拓―開門を決断するときだ

 福岡、佐賀、長崎、熊本の4県に囲まれた有明海。その一角にある諫早湾の干潟をつぶしてできた農林水産省の干拓事業が大きな岐路を迎えた。

 干拓地をつくるために諫早湾を堤防で閉ざしたことと、魚やエビの水揚げが減ったことには因果関係が認められる。閉め切ったままにするのは違法だから、準備の後にとりあえず5年間、排水門を開くようにと、福岡高裁が命じた。

 国営諫早湾干拓事業は菅直人首相にとって、無駄な公共事業批判の原点である。「ギロチン」と呼ばれた1997年の潮受け堤防の閉め切り以降、菅氏は再三、現地入りして、この事業を「走り出したら止まらない公共事業の典型」と訴えてきた。

 しかも、開門は民主党の2009年の政策集にも載った。今年4月には与党と農水省の検討委員会が、開門調査が適当との報告書を、当時の赤松広隆農水相に提出した。赤松農水相もその意向を示していた。

 いまこそ、開門に向けて動き出すため、菅首相自らが積極的に政治決断するときだ。一昨年、開門を命じた佐賀地裁判決に続く2連敗である。大局を考えれば、政府が上告するという選択はもはやないだろう。

 農水省は地裁判決に対し「開門は困難」として控訴していた。いま、開門するかどうかを判断する環境影響評価(アセスメント)を進めている。

 一方、干拓地や周辺で農業を営む人たちは、開門すれば堤防の内側にある淡水の調整池に海水が入って農業用水に使えなくなる、塩害などの被害も生じかねない、と反対してきた。

 たしかに、干拓農地672ヘクタールに41の個人・法人が入植。08年4月から営農活動が本格化し、ジャガイモやタマネギなど約30種類が生産されている。

 だが、今回の判決は農業用水の代替水源を確保できるのではないかと述べた。塩害の主張についても、農水省による客観的な資料に基づく立証がないと指摘した。

 鳥取・島根両県の中海干拓地は、淡水化事業が中止になった後、「簡易ため池」を設けて営農が支障なく行われた。原告はこの事実をあげ、同じく畑作をしている諫早湾干拓地も「農業用水はまったく問題ない」という。

 判決は常時開門に向けた改修などの期間として3年間の猶予を与えた。だが、農水省は02年にアセスせずに1カ月間の短期開門調査をした。その際にとった水門の底部だけを開ける方法ならば、いまの水門の構造のままでできると農水省も認めている。

 高潮の恐れがあるような天候など、防災に必要なときは、判決がいうように状況に応じて閉めればいい。対立してきた漁業者と農業者が共存できる道を、政府は目指すときである。

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