次世代エコカーの主役として、電気自動車(EV)の開発競争が加速してきた。年明け以降、本格的な普及期に入るのは確実だ。下請けも含め、産業界への影響も真剣に考えなくてはならない。
日産自動車のEVリーフが、今月下旬の発売を前に欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。EVがこの賞に輝いたのは初めてという。ガソリン車の時代が変わる象徴的な出来事といえる。
国内メーカーのうち、EVで先行するのは三菱自動車だ。法人向けに昨年発売したアイ・ミーブを今春から個人にも売り出し、生産台数は累計五千台に達した。家電量販店での展示販売も開始した。
出遅れ感のあったトヨタ自動車は、小型車iQをベースとしたEVを二〇一二年に発売すると発表した。米国テスラ・モーターズとはEVの共同開発を進めている。ホンダも小型車のフィットをベースにしたEVの試作車を発表し、市販を前提とした各社の戦略は出そろいつつある。
価格の高さ、一回の充電で走る距離、電池性能などクリアすべき課題は多いが、何よりの利点は、トヨタなどが市販予定のプラグイン・ハイブリッド車(PHV)と同様、家庭などのコンセントから充電できる点だ。
充電用スタンドは今後、高速道路のサービスエリアや商業施設の駐車場などに設置が進むことになろう。燃料電池車や天然ガス車と比べると、電力供給網が基本的に整っている分、インフラ整備はスムーズに進むと期待できる。
ガソリン車と違ってエンジンや変速機がないEVの普及は、国内の産業構造に大きな変革をもたらさずにはおかない。完成車メーカーを頂点とするピラミッドの裾野は広大だ。関連部品を生産してきた下請けの仕事が激減する可能性は前から懸念されてきた。
しかし、いつの時代も転換期とはチャンスでもあった。EVは部品数が少なく構造は単純だ。安全技術の確保が大前提ではあるが、異業種からの参入は比較的容易とみてもよい。岐阜県の自動車部品ベンチャー、ゼロスポーツが郵便事業会社にEV千台の納入を決めたように、完成車メーカーと部品会社の地位逆転といった事態も十分起こり得る。
中小企業でも経営者らがタッグを組んでインフラを含む関連需要の発掘を目指すなど、挑戦と創造の姿勢こそ必要だ。難しくとも頼るべきは知恵と実行力だろう。
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