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12月5日付 編集手帳

 出版社の依頼で太宰治が故郷への取材旅行に出たのは、昭和19年(1944年)のことだ。帰京して書き上げた「津軽」には、上野発17時30分の急行列車に乗って翌朝8時に青森に着いた、と記されている◆14時間半。今はそれだけあれば欧米あたりまで余裕で行ける。70年近くも前の話でしょう、と若い人は笑うだろうが、その後もずっと北国と東京の往来はほぼ半日がかりで、青森に限らず、ふるさとは随分遠かった◆青森県出身の元小結、舞の海秀平さんも80年代に雪の舞う青森駅から夜行列車で上京した思い出を語っている。〈その頃、東京はまだ遠い遠い存在でした〉。先日の東京本社版、東北新幹線の特集記事より◆遠かった青森、遠かった東京が、今や陸路でも3時間20分に。きのう、東北新幹線が新青森駅まで全線開業した。来春には最新鋭車両の「はやぶさ」が投入され、さらに10分短縮されるとか◆「津軽」を手に太宰(ゆかり)の地をたどる人が増えるかもしれない。だが再読しておこうと東京駅の発車ベルを合図に本を開いても多分、最後まで読み切らぬまま、新青森到着のアナウンスを聞くだろう。

2010年12月5日01時24分  読売新聞)
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