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12月4日付 編集手帳

 国文学者の折口信夫は茶を飲むたび、急須の茶殻を食べた。教え子の池田弥三郎さんが『私の食物誌』(河出書房)に書いている。〈むしゃむしゃと…〉とあるから好物だったのだろう◆妙な嗜好(しこう)の人がいるように、妙な嗜好の細菌もいる。米航空宇宙局(NASA)などの研究チームが猛毒のヒ素を食べる細菌を米国の湖で発見したという◆生命に必須と信じられてきたリンがなくても、ヒ素で間に合わせる。「生物学の常識が覆った」と報じられている。これまで生物がいないと考えられた過酷な環境の惑星にも、地球とは違うタイプの生物がいる可能性が出てきたという◆アーサー・クラークは『2001年宇宙の旅』(早川書房)の「まえがき」に記した。自分の(つづ)った物語に比べて、〈真実は例のごとく、はるかに異様であるにちがいない〉と。不思議な細菌は、宇宙が見せた“異様”の(へん)(りん)とでも呼べそうである◆茶殻ぐらいで驚かせてくれるぶんにはいいが、いずれ見つかるかも知れぬ地球外生命も、やはりヒ素がご馳走(ちそう)だろうか。意外に気のいい連中だったとして、晩餐(ばんさん)会にはあまり招かれたくない。

2010年12月4日01時47分  読売新聞)
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