日本航空(JAL)の更生計画が認可され二年後の株式再上場を目指した取り組みが本格的に始まった。この際、政府は航空機燃料税の引き下げなど自由化時代にふさわしい政策を推進すべきだ。
東京地裁が日航の更生計画を認めたとはいえ、これで同社の再建が保証されたわけではない。国民の多くは、本当に安全で信頼できる航空会社に生まれ変わるのだろうか−と首をかしげているのが実情だろう。
何しろ今年一月、負債総額二兆三千億円を抱えて事実上倒産した会社である。政府が緊急支援方針を決め、企業再生支援機構が管財人となって経営を指導して、やっと業務を維持している状況だ。
幸いJALグループの四〜十月の連結営業利益は千三百二十七億円と、更生計画に示された二〇一一年三月期見通しの六百四十一億円を大幅に上回っている。
景気や為替のほか戦争やテロ、火山噴火、インフルエンザなどの突発リスクに遭遇しやすいのが航空輸送事業だ。経営陣はしっかりとかじ取りをしてもらいたい。
社内では人員削減が最大の課題である。国内外四十五路線の撤退にともない、グループ全体で本年度中に約一万六千人減らす計画。早期退職だけでなく整理解雇にも踏み切る方針を決めた。
一部組合はストライキを構えて整理解雇の撤回を求めている。だが多額の公的資金を受けている状況では、組合の強硬姿勢は国民の理解を得にくいだろう。
日航の再建は、同時に航空政策を転換するチャンスでもある。
これまでは空港建設と安全対策、航空産業の振興の三つが柱だった。このうち空港建設は今年、羽田空港に四本目の滑走路を開設したことでほぼ終了した。財源となってきた航空機燃料税はその役割を終えたといえる。
羽田と成田両空港の発着容量拡大で日米間で航空自由化(オープンスカイ)が実現した。引き続き韓国などアジア諸国とも協定を結ぶことになる。格安航空会社(LCC)も乗り入れよう。
その際、国内航空会社の体力が弱くては海外勢に対抗できない。燃料税や固定資産税の軽減、着陸料の引き下げが不可欠である。
また全日本空輸(ANA)は独自にLCC進出を決めている。航空需要の拡大とともに、国際線二社体制をどう維持し発展させるのか、中長期的な航空ビジョンをきちんと描いてほしい。
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