HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 30 Nov 2010 23:10:39 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:新常用漢字表 増えるのは結構だが…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

新常用漢字表 増えるのは結構だが…

2010年12月1日

 字数を一割増やした新常用漢字表が告示された。表現を豊かにすると期待される一方、読めれば書けなくてもいい漢字の登場や、子どもへの負担増などはやはり気になる。漢字を愛すればこそ。

 常用漢字表の改定は一九八一年以来二十九年ぶりとなる。改定前に比べ、百九十一字多い二千百三十六字になった。本紙も三十日付から、漢字表記を改めた。

 常用漢字は、漢字使用の規範の意味が強い当用漢字と違って、あくまで「目安」。しかも今回の改定では「書けなくても読めればいい」と、運用がさらに緩やかになった。使える漢字は増えたことになる。

 これによって、漢字の熟語の一部を平仮名にする「交ぜ書き」や本来とは違う字で代用する「書き換え」など、評判の悪かった表記は減るだろう。本紙でも「変ぼう」は「変貌」に、洪水を意味する「はんらん」は「氾濫」に、「憶測」も本来の表記である「臆測」に替わった。表音文字にはないイメージの喚起力を持った漢字が表現の幅を広げるだろう。

 一方、心配な面もある。文部科学省の専門家会議は九月、学校現場での対応をまとめた。「読む」力については、学習指導要領で、中学生は常用漢字の「大体」が読めることを求められ、高校生は常用漢字の読みに「慣れる」と決められており、二〇一二年度から新常用漢字表に基づいた指導をすることになった。「使ってもよい漢字」ではなく、「覚えなければならない漢字」が増えるのだ。

 「書く」指導では、高校でもすべての漢字が書けるようになることは求めず、教える字数も各校の判断に任せる配慮をした。一方、新常用漢字表が手書きの場合に複数の字体を許容している字に関しては、標準字形は示さず、現場任せにした。

 脱ゆとり教育で学習すべき内容が全体に増えている。漢字が一割も増えたら、どうなるのか。学校の戸惑いは大きい。手書きの字体を定めなかったことも、現場の混乱を招きかねない。

 専門家会議では、手書きの基準となる教科書体の導入を求める意見が出た。検討すべきではないか。常用漢字に縛られず、中学高校で学ぶべき漢字を絞って示すことも考えたい。

 漢字は日本語の表現にとって大事な財産だ。分かりやすく、洗練された表現のために、漢字はどうあるべきなのか。教育の在り方も含め、みんなで考えたい。

 

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