韓国の李明博大統領が北朝鮮軍の延坪島砲撃を受けて「新たな挑発には強硬姿勢で臨む」との国民向け談話を発表した。国民の生命と財産は必ず守るという、指導者としての決意表明である。
李大統領はこれまで北朝鮮には対話と経済協力で変化を促してきたが、「自ら軍事冒険主義と核の放棄を期待するのは難しいと分かった」と断言した。
挑発には「応分の対価を支払うことになる」と警告した。韓国の過去二代の政権が十年間続けた「融和政策」に決別を告げたことになる。
砲撃直後、大統領自身が「戦争にまで拡大しないように」と指示し、強い反撃を制したという。三月の韓国哨戒艦沈没では、北朝鮮の攻撃かをめぐり、国連安保理の議長声明は南北の主張を併記する玉虫色の決着になった。
今回の砲撃で国民から政府や軍は弱腰だとの批判が噴出し、国防相が引責辞任した。大統領も強い姿勢に転じざるをえなくなった。
李政権は同盟国、米国との連携を強め、朝鮮半島の西、黄海では合同軍事演習が来月一日までの日程で行われている。米原子力空母「ジョージ・ワシントン」も参加し、巡航ミサイルは北朝鮮全土に届く。米韓は一枚岩であり、挑発は許さないという警告である。
大統領は北朝鮮に対する「これ以上の忍耐と寛容は意味がない」といい、国民も「我慢も限界だ」と怒りをぶつける。
韓国の世論調査だと、北朝鮮の新たな軍事挑発があれば「戦闘が拡大しても強力な軍事対応」を求めた回答が45%になった。この調査では「拡大回避」「外交や経済的対応」を合わせた回答がわずかに上回ったが、他の調査も含めて「強い軍事対応」を求める声が50%に迫っている。
だが「戦争になったらおしまいだ」「息子にまた徴兵が来るのか」といった不安も広がる。大統領は「北朝鮮に強い軍事的圧力をかけ挑発を阻止することが戦争回避につながる」と繰り返し訴え、国民の理解、結束を求めている。
中国が危機打開に向けて「六カ国協議」の首席代表会合を開くよう呼び掛けたが、李大統領は「いまは対話の時期ではない」と断った。圧力と対話を同時に進めれば、北朝鮮のペースにはまると警戒したのだろう。
暴走する北朝鮮が目前にあるが、韓国が安定を維持できるよう、米国と日本が連携して対応する時だ。
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