北朝鮮がウラン濃縮施設公開に続き韓国の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃した。暴走の背景には資源、食糧支援で金正日体制を支えている中国が、通常兵器による挑発を黙認するような態度を取っていることがある。
韓国・北朝鮮の海上軍事境界線付近で行われた攻撃は、北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議再開のため米国のボズワース代表が北京を訪れている最中だった。
砲撃の狙いが米国と中国の分断にあることがうかがえる。
延坪島付近の黄海では今年三月、韓国哨戒艦が沈没し四十六人が死亡する事件が起き、その対応をめぐり米中両国は激しく対立した。
米韓は国際調査で北朝鮮の魚雷攻撃が原因と断定し、北朝鮮に対する国連非難決議を要求した。中国は国際調査への参加を避けたが、北朝鮮の攻撃と断定できないというロシアの調査をたてに国連で決議を行うことに反対した。
中国は北朝鮮の暴走を封じるため米韓が事件現場の黄海で計画した合同軍事演習にも対決した。
当初、中国政府は態度表明を渋ったが、現職副総参謀長をはじめ軍人が玄関先の海での演習は中国の安全を損なうと反対し、政府も最後は同調した。中国の強硬姿勢はその後、南シナ海や東シナ海の海洋権益問題でも表面化した。
中国は哨戒艦事件にもかかわらず金正日総書記の訪中を五月、八月と二回も受け入れ支援を約束し、金正恩氏への権力世襲も容認する姿勢を示した。胡錦濤総書記の後継者とされる習近平国家副主席も十月、朝鮮戦争への中国義勇軍参戦六十周年を記念する演説で北朝鮮との「血で打ち固められた友誼(ゆうぎ)」を強調している。
北朝鮮が朝鮮戦争以来の攻撃に踏み切った背景に過去二回の核実験で日米韓とともに制裁に加わった中国が北朝鮮の側に立ち後顧の憂いがなくなったことがある。
日米韓のみならずロシアも非難に加わった今回の砲撃にも中国は各国に冷静な対応を呼び掛けるのみで北朝鮮非難を避けている。
米韓が二十八日から行うと発表した合同軍事演習に中国はどう対応するつもりなのか。
平和の祭典である広州アジア大会の最中に行われた蛮行には、中国こそ憤慨しなければならない。北朝鮮の核保有や軍事攻撃で周辺の平和が乱れれば、中国の安全保障や経済建設も脅かされる。
今こそ、中国は対北朝鮮政策を見直し、日米韓、ロシアとともにスクラムを組むべきだ。
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