HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37555 Content-Type: text/html ETag: "104564-16d9-b4494900" Expires: Wed, 24 Nov 2010 00:21:09 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 24 Nov 2010 00:21:09 GMT Connection: close アイルランド EUは危機連鎖を食い止めよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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アイルランド EUは危機連鎖を食い止めよ(11月24日付・読売社説)

 財政危機に陥った欧州の小国、アイルランドが自力再建を断念し、欧州連合(EU)への支援要請に追い込まれた。

 昨年末にギリシャの財政危機が表面化した際には、南欧諸国に問題が波及してユーロが急落した。このため、EUが今春になってギリシャに緊急融資し、ひとまず危機を収束させた。

 半年後に同じユーロ導入国のアイルランドで金融不安が再燃したことは、欧州の財政赤字問題の深刻さを浮き彫りにした。

 EUは迅速に具体的な支援策を打ち出し、これ以上の危機拡大を食い止めるべきである。

 アイルランドは人口約450万人の貧しい農業国だったが、1990年代以降、規制緩和と減税で外資を導入し、「ケルトの虎」と呼ばれる経済成長を遂げた。

 しかし、不動産バブルの崩壊と金融危機で歯車が狂った。財政危機の発端は、不良債権を抱えた主要銀行の経営悪化である。

 政府は巨額の公的資金を投入して銀行を救済した。その結果、財政赤字が膨らみ、今年の赤字は国内総生産(GDP)比で32%に悪化する見通しだ。

 ユーロ加盟国に義務づけられた3%の財政規律の10倍にも達する異常事態である。

 金融市場では、アイルランド国債売りが加速し、金利が急上昇した。財政赤字を抱えたポルトガルやスペインなどの国債も連鎖して売られ、金利が上昇している。

 アイルランドに対する支援策の焦点は、ギリシャ危機の際にEUと国際通貨基金(IMF)が創設した総額7500億ユーロ(約85兆円)の緊急融資制度の活用だ。

 アイルランドへの支援額が900億ユーロ(約10兆円)に膨らむ観測も浮上している。ドイツやフランスが主導して詳細な対策を決め、市場を安心させるべきだ。

 一方、アイルランド政府が自ら財政健全化計画を策定することも急務だ。2014年までに財政赤字の対GDP比率を3%以内に抑えるとしているが、実現できるかどうかは極めて疑わしい。

 市場の不安を払拭(ふっしょく)するためにも増税による財源確保は避けられまい。銀行再生も重い課題だ。

 ただ、急激な引き締め策は、失業増などの経済失速を招く。アイルランド政府は、難しい政策判断を迫られよう。

 金融危機から2年が経過したが、世界経済は依然、低迷したままだ。安定成長の軌道に乗せるためにも欧州の金融不安を速やかに収束させなければならない。

2010年11月24日01時16分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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