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11月24日付 編集手帳

 夜行寝台の列車に乗っていて途中で目が覚めるのは、停車して静まり返ったときである――英文学者の外山滋比古(とやましげひこ)さんがいつぞや、みすず書房のPR誌『みすず』に随筆を寄せていた◆ガタンゴトンの振動と騒音も、慣れると気にならなくなり、急になくなるとびっくりして目が覚めるのだ、と。先週末に所用で札幌市を訪ねた折、ほんの少し時間の贅沢(ぜいたく)をして夜行寝台に乗り、外山さんの説く通りであることを身をもって確かめた◆旅に限るまい。失言、陳謝、失言、陳謝…菅運転士・仙谷車掌コンビが走らす列車の絶え間ない振動と騒音に、悲しいかな、慣らされた気味がなくもない◆大学生の就職内定率は過去最低に落ち込み、中小企業は景気低迷に青息吐息でいる。法相の辞任で振動と騒音が一段落してみると、それらの課題に割かれるべき国会審議の時間を奪った失言の罪深さに改めて思い至る◆石川啄木に一首がある。〈雨に()れし夜汽車の窓に/映りたる/山間(やまあい)の町のともしびの色〉。にじむ()のもとには、人の営みがある。ガタンゴトンに神経を麻痺(まひ)させて、もっと切実な、車窓の光景を見逃すまい。

2010年11月24日01時16分  読売新聞)
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