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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
「いまさら呆(あき)れも憤慨もしませんが」と沖縄の旧知から便りをもらった。「またまたヤマトの健忘症ですね」。たしかに半年前にあれだけ報じられた普天間飛行場の移設問題は、潮が引くように紙面、画面から遠のいた感がある▼つまり本土のメディアは、鳩山さんが迷走し、ふらつき、グロッキーになるのを面白がっただけで、問題は基地でも何でもよかった――と久しぶりの文面は厳しい。しかし反論はしづらい。沖縄はいま知事選挙の真っ最中だが、その模様が本土に届くことはあまりない▼「最低でも県外」を唱えた前首相の背信に、地元では「沖縄差別」という言葉も噴き出した。知事選で競(せ)る候補2人もそれを口にしている。基地を押しつけているヤマトへの対立姿勢が、かつてなく深い選挙なのだという▼差別といえば、沖縄で平和運動を続けてきた中村文子さんに、以前こんな話を聞いた。戦争中は川崎市に住んでいた。沖縄からの移住が多かったサイパン島が陥落したとき、近所の奥さんが何げなく言ったそうだ▼「玉砕したのはほとんど沖縄の人ですって。内地人の犠牲が少なかったのが救いだったんですって」。その人は中村さんが沖縄の人とは知らなかった。口をきけば涙がこぼれるから、黙っていたという▼沖縄は様々な差別にさらされてきた。いまに残るのは、ヤマトによる「無関心」という差別かもしれない。小さい島の基地問題を訴えて「小指の痛みは全身の痛み」と言う。わが健忘症が「差別」を助長しないよう自戒し、その言葉を胸に呼び戻す。