HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 31264 Content-Type: text/html ETag: "80af0c-5b3a-46dfed00" Cache-Control: max-age=5 Expires: Tue, 23 Nov 2010 03:21:07 GMT Date: Tue, 23 Nov 2010 03:21:02 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
与野党のもみ合いの末に、柳田稔法相が辞任に追い込まれた。危急の課題が山積しているのに、政治は何をやっているのか。暗然とした思いを禁じ得ない。国会答[記事全文]
外からの抑えがきかぬまま、北朝鮮の核問題が新たな局面を迎えた。ウラン濃縮用の施設を北朝鮮が米国の核専門家に見せた。濃縮に手を染めていること自体は昨年来、公言してきたが、[記事全文]
与野党のもみ合いの末に、柳田稔法相が辞任に追い込まれた。
危急の課題が山積しているのに、政治は何をやっているのか。暗然とした思いを禁じ得ない。
国会答弁は「二つ覚えておけばいい」という柳田氏の軽口は、国民への重い説明責任を負う閣僚としてあまりに自覚を欠く。国民の信頼回復のための検察改革の担い手には、およそふさわしくない。この結末は当然だろう。
しかし、菅直人政権と民主党執行部は土壇場まで柳田氏続投で事態を乗り切ろうとした。参院での問責決議案可決をちらつかせる野党の圧力に屈すれば、仙谷由人官房長官や馬淵澄夫国土交通相ら他の閣僚にも「ドミノ辞任」の危険が迫ることを恐れたためだ。
問責決議案が可決された場合でも、柳田氏を当面続投させることで野党の「問責カード」の力をそぐことも考えていたというから、驚くしかない。
野党の出方ばかりを気にかけ、厳しい国民世論は眼中になかったというなら、政権を担う緊張感がなさすぎる。
確かに自民党政権下で、問責決議を黙殺した福田康夫首相の例はあるが、政権運営に行き詰まり、3カ月後に首相の座を放り出した。
両院のうちの一方とはいえ、国民の代表である国会の意思を無視し続けるのは、生易しいことではないと知るべきである。
柳田氏の続投表明の翌朝に辞任を求めるというちぐはぐな対応にも驚く。首相官邸の指導力と危機管理能力の欠落があらわになるのは何度目か。
補正予算案の成立にめどがついたとはいえ、10月1日に始まった今国会で成立した政府提出法案はこれまでわずか2本にすぎない。論戦は相変わらず、政治とカネや閣僚の不用意な発言をめぐる応酬が中心で、肝心の政策論争は置き去りにされたままだ。
法相辞任を、国会を本来の議論する場に戻す契機にしなければいけない。
その責任は一義的に政権与党にある。目に余る緩みと稚拙さを、政権運営から一掃しなければならない。
野党もまた重い責任を共有している。問責決議案のやみくもな連発といった国会戦術に血道を上げるなら、国民の期待に沿うことはできない。
ねじれ国会は、与野党が徹底した議論を通じて一致点を見いだしていく「熟議の政治」を求めている。来年度予算案が審議される年明けの通常国会に向け、この臨時国会が、その試金石になるはずだった。
不毛な対立をそのままにして今国会が閉じられるなら、通常国会もまた、惨状を呈することを免れない。
小沢一郎・元民主党幹事長の国会招致問題にけりをつけることを含め、菅首相は態勢立て直しの責任を改めてかみ締めるべきである。
外からの抑えがきかぬまま、北朝鮮の核問題が新たな局面を迎えた。
ウラン濃縮用の施設を北朝鮮が米国の核専門家に見せた。濃縮に手を染めていること自体は昨年来、公言してきたが、その施設の存在が確認されたのは初めてだ。
そればかりではない。核実験に使えそうなトンネルを新たに掘削したり、「自前のエネルギー確保」を名目に実験用の軽水炉建設の計画を明らかにしたりと、北朝鮮はこのところ矢継ぎ早に核開発の動きを見せている。勝手のし放題である。
とうてい容認できない。この地域で核をめぐる脅威が深まることを、食い止めなければならない。
濃縮施設の稼働状況はわからない。だが、軽水炉で燃やす低濃縮ウランにとどまらず、濃縮を繰り返して兵器級の高濃縮まで進むと、兵器化しやすいウラン型核兵器の開発に結びつく。昨年まで2回の核実験を強行したプルトニウム型に加えての脅威になる。そうなれば、北東アジアは深刻な緊張にさらされる。
注目されるのは、施設公開にしろ、軽水炉計画の言明にしろ、北朝鮮はいずれも米国から専門家を招いて説明する形を取ったことだ。
北朝鮮は、自らの生存の鍵を握るとする米国に「事態の深刻さ」を認識させ、米朝協議へと動かそうと狙っているように見える。その先には、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に替え、米朝国交正常化によって現体制を維持したいとの思惑がある。金正日(キム・ジョンイル)総書記から三男の正恩(ジョンウン)氏への後継の基盤固めに利用したい狙いもあるだろう。
思惑は別にして、北朝鮮が本来しなければならぬのは、6者協議の合意にある非核化の道に戻ることだ。
この合意は、非核化と米朝・日朝の国交正常化、経済支援をパッケージとして描いている。北朝鮮の核問題は、この方針をもとに包括的な解決をめざしていく以外にない。
日本をはじめとする関係国は、こういう対話と交渉の場に北朝鮮を引き出す局面をどう作るかが大切だ。
新たな展開を受けて、米政府代表が日韓中を歴訪している。
日米韓は、北朝鮮の仕業とされる今春の韓国軍艦の沈没事件後、6者協議を含む北朝鮮問題に取り組めずにきたが、韓国は核問題に沈没事件を絡ませないという苦渋の決断をした。その選択を生かし、日米韓は互いの立場をすり合わせて、結束をさらに強めて北朝鮮に当たらねばならない。
経済やエネルギー面で北朝鮮が頼りとする中国の責務もまた大きい。6者協議の議長国である。北朝鮮が混乱するのを嫌ってかばうのではなく、北朝鮮が戻るべき道に戻るよう、調整に乗り出してもらいたい。