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法人税引き下げ 「税収中立」では意味がない(11月22日付・読売社説)

 世界最高水準にある日本の法人税を引き下げ、企業の国際競争力を高める――。そんな菅政権の税制改革構想に早くも黄信号が(とも)っている。

 政府税制調査会が、来年度税制改正の焦点である法人税を巡る論議を本格化させている。だが、減税の効果や代替財源を巡って減税推進派と慎重派の溝は深く、議論は迷走気味だ。

 企業活力を引き出し、雇用や投資の拡大につながる法人税減税は世界的な潮流であり、菅政権が包括的な税制改革を断行できるかどうかの試金石と言える。首相は指導力を発揮し、来年度から実質引き下げを実現すべきである。

 日本の法人税は、国と地方の税率を合わせた実効税率が40・69%で、10年間据え置かれている。この間、主要国では法人税の引き下げ競争が続き、アジア諸国は10〜20%台まで低下している。

 このままでは、経済成長を支える企業が重い税負担を嫌って海外に移転するケースが増え、外国企業の対日投資も呼び込めない。

 確かに、企業行動は税の重さだけで決まるものではない。だからと言って、割高な法人税を放置すれば、国内産業が空洞化し、雇用も減少しよう。それを防ぎ、日本に立地する魅力を高めるためにも法人税下げは急務である。

 問題は財源だ。税率を5%下げれば、税収は約2兆円減少する。財務省は、法人税負担を軽くしている様々な特例措置を見直せば、最大4・5兆円を捻出(ねんしゅつ)できるとして、減収分を完全に穴埋めする「税収中立」を主張している。

 これに対し、経済界は優遇措置の縮小には反対の立場だ。

 厳しい財政事情を考えれば、税率下げと同時に、課税対象を拡大し、一定程度の増収策を講じるのはやむを得まい。例えば、赤字を翌年以降の黒字と相殺できる繰越欠損金制度の見直しなどは検討対象となろう。

 ただし、法人税率引き下げと課税対象の拡大を差し引きすれば、税負担が現状より軽減される純減税とすべきだ。「税収中立」では、企業にとってメリットは、ほとんどない。

 法人税減税は企業だけを優遇するものではない。税負担が軽くなった分だけ、企業は国内で研究開発拠点などへの投資を拡充できる。それが業績アップにつながれば、恩恵は株主や従業員、債権者、消費者などにも及ぶ。

 財源の帳尻合わせにこだわるあまり、法人税引き下げ本来の目的を見失ってはならない。

2010年11月22日01時10分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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