HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Sun, 21 Nov 2010 20:10:41 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:障害児教育 共に学ぶ理念の実現を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

障害児教育 共に学ぶ理念の実現を

2010年11月21日

 障害のある子もない子も共に学び育つ。日本が批准を目指す共生社会をうたった障害者権利条約はそんな教育を求めている。だが、中央教育審議会は理念には賛同しつつも実現には後ろ向きだ。

 「メイちゃん、カレーはこっちの色だよ」。男の子が茶色のクレヨンを差し出した。でも彼女は青や赤でカラフルなカレーライスを仕上げて楽しそう。「はい、黒板に集中」と先生が一声。うつむいて教材をいじっている彼女に、他の男の子が「メイちゃん、黒板はあっち」と促した。

 メイちゃんは東京都内の区立小学校二年生。障害のない子の通常学級で学ぶダウン症児だ。周りに支えられて育ち、周りはいたわりの心を培う。教室はそんな雰囲気だ。障害児に理解のあるこのベテラン先生は「いろんな子がいてこそ子どもは成長する」と言う。

 だがこのケースは例外的だ。

 障害のある子を盲・ろう・養護学校へ機械的に振り分ける形をやめて、障害からくる多様なニーズに細やかに対応する特別支援教育が二〇〇七年に始まった。しかし、障害児を分け隔てる基本的な仕組みは変わっていない。

 入学前の健康診断で障害が判明すると、教育委員会が特別支援学校・学級に行くことなどを決める。メイちゃんも特別支援学級へ、と区教委に判定された。本人や親に就学先の決定権はない。

 幼いころから健常者と苦楽を共にし自立して生きる力を養ってほしい。そんな願いから両親が直談判を重ね、入学を勝ち取ったのだ。ただし登下校などに付き添うことという条件が付けられた。

 三年前に日本が署名した障害者権利条約の理念に照らせば、障害児を判別して、学ぶ場を決める権利を奪うのは差別だ。

 批准に向けて法整備を検討している政府の障がい者制度改革推進会議は、障害の有無によらず、すべての子どもが地域の小中学校で学ぶのを原則とするインクルーシブ教育への転換を提言している。

 だが、政府の求めで教育制度の在り方を並行して協議中の中央教育審議会の専門家らは「教育環境が整わないまま子どもを同じ場に組み入れると混乱する」などとして、後ろ向きの意見を近く集約する姿勢だ。障害者の人権を守ろうとの意識がすっぽりと抜け落ちた議論で、本末転倒だ。

 障害のある子もない子も社会に出れば支え合って生きる。育ち盛りに共に学んでこそ大切な知恵や思いやりが身に付く。

 

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