過去の事業仕分け結果を点検する「再仕分け」が終わった。あきらかになったのは、官僚の抵抗と菅直人政権の混乱ぶりだ。これで「増税環境が整った」などと思われたら、とんでもない話である。
今回の作業は過去二回の仕分けとは、違う意味合いがある。これまでは自民党政権時代に積み重ねられた事業・政策の無駄や非効率を洗い直す作業だった。
ところが今回は、民主党政権に交代して一度仕分けした後、菅内閣自身が閣議決定したり、予算要求した事業を再点検する作業だった。
実際に作業を始めてみると、各省の政務三役からは「これは政権の目玉事業だ。閣議決定もされている」などと予算削減への反論が相次いだ。小学校にパソコンを配布するフューチャースクール推進事業が典型である。
この事業は「一人一台の情報端末」を目指して、政府の新成長戦略に盛り込まれていた。昨年の仕分けで予算計上見送りと判定されたにもかかわらず、承知のうえで原口一博前総務相が来年度予算の概算要求に盛り込んだ。
再仕分けでは、継続分は廃止、予算の特別枠分は見直しと判定された。同じ民主党政権の中で「必要、いやいらない」と判断が真っ二つに分かれたのだ。
国民の目から見れば「いったい、この政権はなにをしているのか」と疑問がわくのは当然だ。
宝くじの普及広報事業や外国人の訪日旅行促進事業など、以前の仕分けで無駄を指摘されながら看板を掛け替えたり、事業が焼け太りしたりする例も発覚した。
こうした問題が起きるのは、いくつかの原因がある。まず執拗(しつよう)な官僚の抵抗である。正面突破が難しいとみると、官僚は忙しい政務三役の目をごまかすために、巧妙に看板を掛け替えたりした。
三役段階でチェックすべきなのは当然だが、官僚が平気で仕分け判定を無視するのは、事業仕分け自体に法的根拠がないせいでもある。行政刷新会議の法的位置付けを考え直すべきだ。
三役が意図して仕分け結果を無視するなら、とりもなおさず政権内で政策の意義や細部が十分に詰め切れていない証左である。
政権自身が政策を公開で「内部監査」する意義は認めたい。官僚の手口が白日の下にさらされたのも一歩前進である。仕分け手法と政策決定プロセスにおける位置付け、国会との関係などを見直して制度を定着させるべきだ。
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