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11月18日付 編集手帳

 〈□□□□□けさの女の朝化粧〉。吉川英治は旅先で迎えた朝、宿の女将(おかみ)から色紙に揮毫(きごう)を頼まれると、いつも同じ一句をしたためた。空欄は「初雪や」でも「ゆく春や」でも何でも構わない◆〈粉黛(ふんたい)の仮の姿と思へども 今宵(こよい)□□の美しきかな〉。歌人の吉井勇はお座敷などで綺麗(きれい)どころから色紙を差し出されると、いつも同じ一首を進呈した。空欄はその女性の名前で埋める◆毎度毎度、即興で詠むのは難儀なことで、この程度の横着は許されよう。文人ならば、である。柳田稔法相が「法相はいいですよ。二つだけ覚えておけばいい」、そう発言したという◆二つとは〈個別事案についてはお答えを差し控える〉と〈法と証拠に基づいて適切にやっている〉。なるほど、頭を使う空欄もない。少し利口なオウムなら柳田氏の後釜が務まるだろう◆文人の揮毫では、逗留(とうりゅう)した宿屋の主人から色紙を求められた島崎藤村に“迷作”がある。紀田順一郎氏『コラムの饗宴(きょうえん)』(実業之日本社刊)より。〈退屈な三日間〉――藤村が揮毫した言葉であって、法相が国会審議の感想を述べた言葉ではないので、誤解なきよう。

2010年11月18日01時26分  読売新聞)
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