HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 17 Nov 2010 03:10:42 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:スー・チーさん 軍政は対話を進めよ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

スー・チーさん 軍政は対話を進めよ

2010年11月17日

 ミャンマーのアウン・サン・スー・チーさんが七年半ぶりに自宅軟禁を解かれた。多くの人々が祝福し、演説に耳を傾けた。民主化への願いを、軍事政権はいつまでも抑え込めると思っているのか。

 とりあえずは、ほっとした。今回を含め二十年余で通算十五年間もの軟禁。それでも六十五歳のスー・チーさんは疲れを見せず、人々の前に笑顔で現れた。

 解放の翌日、スー・チーさんの演説を聴きに、四万人もが詰めかけた。軍政ににらまれるのも覚悟の上で、民主化の望みをあきらめていない人々がこんなにいる。

 「誰も憎んではいない」。スー・チーさんは演説で軍政批判を控えた。記者会見でも「軍政の誰とでも会う」と呼びかけた。対決でなく対話という民主的な解決を、国際世論も励まし続けたい。

 とはいえ、この七年半で民主化がさらに厳しい状況になった。

 軍政は思い通りの「民政移管」を完結させる寸前だ。今回の解放も、自信の表れといえる。

 二十年ぶりの総選挙を今月七日に済ませ、翼賛政党が圧勝の見通しとなった。これほど都合よく法律を定めれば当然である。

 スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)を除外し、立候補には一人五百ドル(約四万円)の登録料が必要としたのも一例だ。一般的な年収は二百ドルほどだから、二年分以上。普通の人々には、出馬するな、という額だろう。

 国際社会も一枚岩とはいかなくなった。欧米諸国は総選挙を批判しても、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)は「前進」と評価した。天然ガスなど資源が豊かなミャンマーへの投資拡大が目当てなのは明らかだ。

 経済発展も、民主化が進まねば軍政幹部を肥やすだけだろう。物ごいする街角の子どもを見て、ミャンマー人の男性がこぼした涙が忘れられない。「昔は物ごいする子などいなかったものを」。農作物がよく育ち、困れば助け合い、飢える心配などなかった国だ。

 十万人規模の反政府デモは三年前のこと。武力鎮圧で日本人ジャーナリスト長井健司さんも犠牲になった。人々の不満は力で抑えられているにすぎない。再び噴き出せば流血が繰り返される。双方が対話するしか道はない。

 欧米や中国と異なり、日本には細まったとはいえ、軍政ともスー・チーさんともパイプがある。人々の願いがかなうよう、橋渡しできる機会を探っていきたい。

 

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