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【社説】

週のはじめに考える それでも薄氷は続く

2010年11月16日

 一連の国際会議が終わりました。底流にあったのは「世界経済のリスクをどう管理し、成長を達成するか」という課題です。日本も避けて通れません。

 韓国・ソウルで開かれた二十カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)と横浜市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議には、共通するメッセージがありました。

 それは、ひと言で言えば「均衡ある持続可能な成長」を目指して努力する。会議で合意された多くの文書には、この言葉を使ったフレーズが繰り返し登場します。

◆持続不可能な世界経済

 私たちはこの美しい文言を逆に読み替えたほうがいい。言い換えれば「いまの世界は均衡がなく、持続可能でもない」。この点をまず、しっかりと認識する必要があります。現状認識があやふやでは対処方針も定まりません。

 これまでは米国が巨額の経常赤字を出しながら、日本や中国、欧州が稼いだ黒字を米国に投資し、全体として成長する。それが「繁栄へのメカニズム」でした。

 ところが、二〇〇八年の金融危機で米国一極に依存した世界経済の成長構造が崩壊します。米国の家計はいまや借金苦にあえいで、とても高価な輸入品を買うどころではありません。自分たち自身が世界に商品を売って稼がなければならなくなったのです。

 オバマ大統領は五年間の輸出倍増計画を掲げ、景気回復の柱を内需から外需にかじを切り替えました。米国が用意した「仕掛け」は二つあります。

 一つは経常収支の数値目標。米国は経済交渉で苦境に立たされると、数値目標を持ち出す癖がありますが、国内の経済活動全体の結果である経常収支を政府が管理・操作できるわけもない。

◆米中の思惑が交錯する

 米国はダメもとで暴投を投げ、相手がひるんだすきに「マクロ経済の相互監視強化」という真の目標を達成した形になりました。当面の狙いは人民元切り上げです。人民元が実質的な固定相場を維持し、外国から見て安上がりの製品を輸出し続ける限り、米国の輸出は増えないからです。

 中国が輸出を背景に巨額の外貨準備を積み上げて米国債を買い増しする「均衡なき状況」も米国、ひいては世界にとって持続可能ではない不安定要因になります。

 もう一つが環太平洋連携協定(TPP)でした。TPPについて、オバマ大統領は演説で「私たちの目的は輸出拡大による雇用創出だ」と述べています。

 アジア太平洋地域がこれからの成長エンジンであるのは言うまでもありません。米国は中国の躍進を意識しつつ、中国が入る前に協定のルール作りで主導権を発揮し、地域における「盟主の座」を確実にしようと狙っています。

 中国は米国の思惑を知りながら「市場で決定される為替相場システム」への移行に同意しました。中国も成長のために資本自由化は避けられず、したがって固定相場を維持できないという国際経済の原理を理解しているのです。

 華やかな舞台の裏側で主役である米中の思惑が激しく交錯した結果、会議は「自由で開かれた貿易と投資が繁栄と安定への道」(APEC)、通貨安競争を念頭に「非協調的政策はわれわれ全員にとって悪い結果を導く」(G20)という合意に達しました。

 出し抜くのは良くない。全員が協調しようという約束です。しかし、これで楽観はできません。リスクはそこにある。

 まず米国の二番底リスク。米国の景気が立ち直る前に、再び腰折れしてしまう可能性がある。中間選挙に敗北したオバマ政権はもはや財政出動に頼れず、連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和を続けるしか手がありません。時間切れにならないか。

 中国も人民元の切り上げを急げば、輸出企業が倒産し失業が増えて、国内で社会不安を招く懸念を抱えています。反日デモの背景には指導部への不満がある。温家宝首相は先に「中国が社会的、経済的混乱に見舞われれば、世界は破局する」と警告しました。つまり国内暴発リスクです。

 そして、なにより日本。菅直人政権は通貨戦略や農業改革を、どう考えているのでしょうか。批判が殺到すると市場介入するものの、円高を活用する視点は見えない。根本的原因であるデフレ阻止に向けた日銀との協調行動もない。自由化に備えた農業改革はこれから議論を始める段階です。

◆日本が誇る技術を使え

 たとえば農業は生産技術が世界トップ水準なのですから、途上国への農業投資を進める方策を考えてはどうか。エネルギー分野でも世界に誇る省エネや環境技術があります。要は構想力なのです。場当たり対応ではなく。

 

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