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2010年11月16日(火)付

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内閣支持急落―「やる気」が疑われている

菅直人内閣の支持率が急落した。朝日新聞社の世論調査では27%だ。野党は態度を硬化させ、補正予算案は政権が期待した公明党の賛成も得られないまま、衆院を通過する。[記事全文]

平和賞サミット―ヒロシマの遺産を世界に

これまでにノーベル平和賞を受けた人たちが広島に集い、「ヒロシマの遺産―核兵器のない世界」について話し合う国際会議が開かれた。顔をそろえたのは、チベット仏教の最高指導者ダ[記事全文]

内閣支持急落―「やる気」が疑われている

 菅直人内閣の支持率が急落した。朝日新聞社の世論調査では27%だ。

 野党は態度を硬化させ、補正予算案は政権が期待した公明党の賛成も得られないまま、衆院を通過する。

 この数字の変化に、菅政権はどんな教訓を読み取るべきか。急落の理由を腑分(ふわ)けして考える必要がある。

 一つは、政策判断や選択に対する批判である。

 賛否の割れる難しい課題について、政権がぎりぎりの決断を下した結果に対する批判であれば、それは腹をくくって引き受けるしかない。

 尖閣諸島事件をめぐる対応が強い批判を浴びていることは間違いないが、一方で政権は日中双方のナショナリズムの無益な沸騰や衝突を防ぐ責務も負う。その是非は気軽に一刀両断にできるものではない。

 こうした批判に起因する急落なら、実はまだ救いがある。

 下落の大きな理由、菅政権にとってより深刻な理由は、別にある。

 本紙調査では、不支持と答えた人のうち、理由に「政策」を挙げた人は2割強にとどまる。6割を超える人が選んだのは、「実行力」だった。

 政策を遂行する力量があるか。いやそもそも、その気があるのか。そこに疑問を抱かれていると解釈せざるを得ない。

 確かにそう思われても仕方のない対応が目につきすぎる。

 政治とカネの問題では、小沢一郎元代表の国会での説明も実現できない。企業・団体献金は受け入れを再開した。国会議員の歳費削減に党内合意を取り付けることにも難渋している。

 尖閣事件では、政治が負うべき責任を検察や海上保安庁に押しつけている、といった印象を与えている。

 そうしたことの繰り返しで支持を失い、そのためさらに実行力が弱まる。負のスパイラルである。

 いまさらながら、すべては民主党の不慣れのせいということか。

 与党として合意形成を進めていく経験が足りないうえに、菅政権は小沢氏やかつての自民党の派閥領袖(りょうしゅう)のような数の力も持たない。外交上の判断も、経験によって磨かれる面が大きい。

 しかし、もう「けいこ不足」を言い訳にできる時期は過ぎた。

 政策を実行し、ひとつずつでも結果を有権者に見せていくしかあるまい。それを通じてしか、政権の基盤は固め直せないだろう。

 あれもこれもと多くに手を出さず、課題に優先順位をつけてしぼり込む。覚悟を決めることが肝心だ。そこに政権が持てる力を集中し、合意形成に向けて周到な手を打っていく。

 逆に最悪なのは、支持率急落にたじろぎ、党内で異論が噴出し、さらに迷走を重ねることである。

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平和賞サミット―ヒロシマの遺産を世界に

 これまでにノーベル平和賞を受けた人たちが広島に集い、「ヒロシマの遺産―核兵器のない世界」について話し合う国際会議が開かれた。

 顔をそろえたのは、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世や、人種隔離政策を撤廃した南アフリカのフレデリク・デクラーク元大統領ら6人と、国際原子力機関、核戦争防止国際医師会議など13の受賞団体の代表だ。

 参加者は、核兵器の使用は道徳に反し非合法との見解を広げることや、米ロの新戦略兵器削減条約(新START)の批准、核保有国の核兵器大幅削減などを求める宣言をまとめた。

 会議の主催団体や広島市は、昨年の受賞者であるオバマ米大統領にも参加を求めていたが、実現しなかった。

 先の米中間選挙で与党・民主党が大敗し、新STARTや包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准は厳しい情勢だ。米国が核関連予算を増やしたり、未臨界実験を実施したりしたことで、オバマ氏に「裏切られた」という失望の声も広島では聞かれる。

 しかし平和の指導者たちが3日間、真剣な議論を繰り広げる姿は、オバマ氏が掲げた「核なき世界」が国際社会の共通課題になっていることを感じさせた。この機運をさらに高めたい。

 宣言が核兵器禁止条約に賛成したことは注目に値する。2007年にマレーシアとコスタリカが国連総会に共同提案したこの条約は、採択されていないものの、潘基文(パン・ギムン)事務総長が核軍縮への5項目を提案した際、「よい出発点」と評した。今年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書も条約に初めて言及した。

 会議では、対人地雷全面禁止条約が実現するまでの経緯が紹介された。

 推進したのは、NGOの連合体「地雷禁止国際キャンペーン」だ。各国のNGOはまず、自国の政府に働きかけた。ベルギーやオーストリアなど国内法で対人地雷を禁じる国が現れ、こうした活動が政府間会合を成功させる原動力となったのだ。

 1997年の平和賞を受けた同キャンペーンのジョディ・ウィリアムズさんは「政府を待っているだけではだめ。市民が動かなければ核兵器廃絶は実現しない」と発言した。

 この経験を参考にしたい。政府と政治家、NGO、市民らが力を合わせ、核兵器禁止条約の土壌づくりに動く。そのための準備会合を広島や長崎で開いてはどうか。

 受賞者たちに感銘を与えたのは、被爆者の証言だった。壮絶な原爆体験を語ったあと、「原爆には憎しみを持っているが、憎しみで憎しみを消すことはできない」と結んだ。

 暴力の連鎖ではなく、同じ苦しみを繰り返させないというメッセージだ。

 この精神も世界に広めたい。

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