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菅首相が東工大で取り組んだ卒業研究は、「燃焼伝播(でんぱ)における粉体の影響」だという。在学中に考案した麻雀(マージャン)の点数計算機に比べ分かりにくいが、目下の急務は明々白々だ。外交の「延焼」を止める粉骨砕身である▼北と南で国境がくすぶる時の国際会議は、試練だが幸運でもあった。錦秋(きんしゅう)の国に集う大国首脳たちは、こちらが言うべき事のある相手ばかり。一日のうちに米国、中国、ロシアのトップと話せる場など、そうそうない。麻雀の役満貫、大三元を思わせる会談相手こそ、ホスト国の特権だろう▼その首尾やいかに。関係修復を期した米大統領とは共に中国を牽制(けんせい)したが、目新しい進展はなかった。中国の国家主席やロシア大統領には、どれほどの覚悟で反論や抗議の言葉を投じたのか、少し心もとない▼採点はつい辛くなる。民主党政権は沖縄でつまずき、尖閣で転げ、北方領土で頭を打った。よほど島に嫌われたらしい。政権交代は新たな外交に打って出る好機でもあったのに、場当たり的にヘマを重ねている。せめて横浜の「大三元」で出直してほしい▼麻雀ついでに記せば、プロ雀士の小島武夫さんが「自分の手にほれ込む前に、3人を相手にしていることを忘れるな」と戒めている。政治主導を言うなら、この現実主義と駆け引きの技、すなわち外交のイロハを勉強し直すべきだろう▼国際政治では首脳の個性も切り札になりうるが、日本はそれ以前の段階である。問われているのは政治家の外交力だ。「票にならない」で済んだ時代は、とっくに終わっている。