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11月13日付 編集手帳

 斎藤茂吉に猫の舌を詠んだ歌がある。〈猫の舌のうすらに(あか)き手ざはりのこの悲しさを知りそめにけり〉◆手触りではないが、子供の頃、家に出入りしていた野良猫に毎朝のように眠っている睫毛(まつげ)をなめられ、「早く起きろ」と催促された経験があるので、歌人の言ったどこか悲しい感触はよく分かる。その舌がミルクや水を飲むときには独特の巧妙な動きをするとは、記事を読んで“知りそめにけり”である◆猫の飲み方を米マサチューセッツ工科大学などの研究チームが解明し、科学誌『サイエンス』電子版に発表した◆犬は舌をひしゃくのように曲げ、水をすくって飲む。猫の場合は複雑で、丸めた舌先を水面から素早く引き上げて水柱を作る。水柱が重力で崩れるまでの一瞬に、柱の上部をパクッと()み切るのだとか。生得の技とはいえ、じつに器用なものである◆それにつけても科学者の好奇心は範囲が広い。〈猫はみな笑えるのです〉とはルイス・キャロル『不思議の国のアリス』で公爵夫人が語る言葉である。わがネコ舌が権威ある科学誌にねえ…ニッコリ顔の猫がどこかの路地裏にいるかも知れない。

2010年11月13日01時35分  読売新聞)
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