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太平洋を囲む国々による自由貿易圏づくりの「夢」は、現実の「目標」として共有されるか。米国や中国、ロシアなど21の国や地域の首脳があすから横浜で、持続的な経済発展の道をめぐって話し合う。[記事全文]
沖縄県知事選が始まった。候補たちは、本土以上に停滞している地域経済をどう元気にするかを訴えている。しかし、背景にあるのはまぎれもなく、基地問題の重圧である。現職の仲井真[記事全文]
太平洋を囲む国々による自由貿易圏づくりの「夢」は、現実の「目標」として共有されるか。米国や中国、ロシアなど21の国や地域の首脳があすから横浜で、持続的な経済発展の道をめぐって話し合う。
このアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、人口で世界の4割、経済規模で5割を占める国々をつなぐために設けられた。
オバマ米大統領は、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現を通商戦略の核にすえて今後の成長を図ろうとしている。貿易立国の日本にとっても重要な枠組みだ。横浜APECで議長を務める菅直人首相には、構想を後押しする責任をしっかりと果たしてもらいたい。
1989年発足のAPECは、欧州や北米のブロック経済化を懸念した日本と豪州が、自由貿易を推進する新たな枠組みを求めたのがきっかけだった。難航していた多角的貿易交渉も突き動かし、成功に導いた。
しかしその後のAPECは鳴かず飛ばずだった。原因は日本にもある。農業問題での国内対立を恐れ、米国の自由化論についていけなかった。
APECは2010年までに先進国が「自由で開かれた貿易と投資を達成する」との目標を掲げてきた。だが現実は理想に遠く、多角的貿易交渉ドーハ・ラウンドも9年の交渉を経てなお合意のめどが立っていない。
多国間交渉に期待をもてない国々は個別交渉に走り、世界はすっかり二国間のFTA(自由貿易協定)時代だ。それで曲がりなりにも自由化が進展したが、弊害もある。協定ごとにルールが異なり、世界で活動する企業にとって対応が複雑になることだ。からまっためんのような「スパゲティ・ボール現象」とも言われる。
横浜APECは、こうした問題を背景に各国首脳らが多国間協定の大切さを改めて認め合う好機である。幸い、議論は活発化しそうだ。関税撤廃をめざす9カ国の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉に米国が積極姿勢を示したことが刺激剤となっている。日本があわてて交渉参加を検討し、中国も関心を示した。
TPPに日本が参加すれば、日米を含む巨大自由貿易圏となる。そのときはFTAAPはもはや「夢」ではない。次なる「目標」に進化するだろう。死に体のドーハ・ラウンドが生き返る希望も見えてくる。
世界経済が苦境に陥った今こそ、保護主義で貿易を小さく囲い込むのでなく、自由貿易を広げていくことが求められる。80年前の世界恐慌とその後の世界大戦の歴史の教訓である。
APECの自由貿易圏づくりは、その教訓を生かせるかどうかのカギを握る。菅議長の役割は重大だ。
沖縄県知事選が始まった。候補たちは、本土以上に停滞している地域経済をどう元気にするかを訴えている。しかし、背景にあるのはまぎれもなく、基地問題の重圧である。
現職の仲井真弘多氏はこれまで、米軍普天間飛行場を県内に移設することを条件付きで容認してきた。だが昨年からの激しい論争を経て「北海道から鹿児島までのヤマト(本土)で」と、本土移設を求める方針に変わった。第一声で「安全保障を日本全体で考えてもらう」と訴えた。
一方、新顔である前宜野湾市長、伊波洋一氏は市長時代から「国外移設」が持論である。第一声では「県民と日米両国の闘いだ。私はぶれない」と訴えた。
移設先について、本土か国外かの違いはあるが、横一線でつばぜりあいする仲井真、伊波両氏の主張は「基地は県外へ」ということで一致している。
基地か経済か。沖縄はこの二者択一的な論争で何度、知事選を戦ってきただろうか。本土復帰以来、11回目となる今回は、これまでとはかなり様相を異にする。論戦は県境を越え、「沖縄対ヤマト」という対立の構図がこれまでになく深まっているようなのだ。
県内では今年1月に、地元の辺野古への基地移設に反対する稲嶺進・名護市長が誕生した。秋の市議選でも市長支持派が大勝した。自民県連も県内移設反対に変わった。県議会も、国外または県外への移設を求める意見書を全会一致で可決した。言葉を換えれば、沖縄では県民が一丸となって「基地は県外へ」と訴えている。
「最低でも県外」と述べた鳩山由紀夫前政権の迷走の後、沖縄で「県内移設」を正面から唱えるのは政治的にとりえない選択になっている。日米両政府が合意している辺野古への移設に方針を戻した民主党は、独自候補を擁立できない異例の選挙となった。
本土にいて安全保障の恩恵を享受している者は、日米関係の根幹を成す安全保障体制をどのように考えるべきなのか。そんな根源的な問いを沖縄が本土に投げかける選挙となっているのではないか。
仲井真氏は自民県連や公明が、伊波氏は共産、社民などが推している。
これまで選挙で動いてきた県内の組織が変わりつつある。
県建設業協会は国政選挙や知事選で自民党を中心とする保守系候補を推薦してきたが、今回は初めて、会員企業の自主投票に決めた。
沖縄の米軍基地で働く日本人従業員が入る全駐留軍労働組合(全駐労)沖縄地区本部は民主党の支持母体だが、ここも組合員の声をもとに初めて自主投票の道を選んだ。
投票は28日だ。沖縄は本土の人こそ当事者として考えるよう迫っている。