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「LOVE(ラブ)」と「LIKE(ライク)」はどう違うのか。何で読んだか思い出せないのだが、ある説明に感心して書き留めたことがある。LOVEは異質なものを求め、LIKEは同質なものを求める心の作用なのだそうだ▼辞書的に正しいかどうかはおいて、なるほどと思わせる。言われてみれば「愛」には不安定な揺らぎがあり、「好き」にはどこか安定がある。その安定感は、自分と同じものを相手に見いだした心地良さかもしれない――。そんなあれこれを、群馬のいじめのニュースに思い巡らせた▼自殺した小6の少女は、仲良し同士が集まる給食の時間に独りで食べていたそうだ。報道を機に、東京の声欄に「好きな子グループ」への意見がいくつか載った。都内の主婦は「好きな子同士で固まっていないとみじめなんだ」という娘の胸中を記していた▼「同調圧力」という心理学の言葉を、最近よく耳にする。集団の中で多数派に合わせるのを強いる空気のことだという。この「力」が、子どもや若者の間で強まる傾向らしい▼子らは仲間外れを恐れて、用心深くグループに合わせる。ベネッセの調査によれば小学男女の半数は「話を合わせている」そうだ。自分を安全地帯に置く言動と、異質な者の排除は、意図はなくとも表と裏の危うい間柄にある▼同調圧力の強まりは、はじかれた者への想像力を殺(そ)ごう。冒頭の定義に従うなら、ひいては「愛」を失うことにもなる。LIKEを悪者にする気はないが、用心はいる。子どもだけではない。大人はなおのことと胸に留めたい。