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幼児教育と保育を一体化し、子どもと親はもちろん、社会全体の利益にもなる新しい仕組みを整えたい。内閣府が示した「幼保一体化」の進め方に関する案は、そうした方向への重要な一[記事全文]
「やっぱり『友達』っていいな!」と題した漫画をノートに残し、命を絶った群馬県桐生市の小学6年生、上村明子(うえむら・あきこ)さん。彼女が通っていた学校による調査結果が、明らかにされた。[記事全文]
幼児教育と保育を一体化し、子どもと親はもちろん、社会全体の利益にもなる新しい仕組みを整えたい。
内閣府が示した「幼保一体化」の進め方に関する案は、そうした方向への重要な一歩だ。ここで何よりも優先されるべきは、子育て支援サービスを素早く、抜本的に拡充するために知恵を集めることである。
民主党は政権公約に「子どもに関する施策の一本化」を掲げ、6月に閣議決定した新成長戦略に「幼保一体化」を盛った。菅政権が来年の通常国会に関連法案を出すという。
しかし、10年ほどかけてすべての幼稚園と保育所を廃止、教育と保育をする「こども園」に移行という内閣府の案は、もっと丁寧な議論が必要だ。
幼稚園側からは「優れた幼児教育が途絶えてしまう」「一つの枠に押し込めるべきでない」など、早くも強い反発が出ている。ねじれ国会で混乱を招かないか、心配になる。
まずは公的に支援する施設やサービスを拡充することが急務だろう。それを先行させつつ、10年後の最終的な姿についてはもう少し時間をかけて検討したらどうか。
現在、公費で運営費の半分以上を賄う認可保育所に入れている子どもは約216万人。申請中の待機児童は約2万6千人。公費の出ない認可外の施設には23万人の子どもがいる。このほかにも、安心して子どもをあずけられるなら、働きに出て能力を生かしたいと考えている親は多いだろう。
地域の幼稚園の中には定員割れしていて子どもを受け入れ可能なところも少なくない。保育の受け皿になりたいと考えるところもある。政府や自治体が施設の改修や人材確保を助ければ、子ども園へスムーズに移行でき、あずかる子どもを増やせる。
充実策には、財源が必要だ。政府は、平日昼間の保育施設の定員を2014年度までに26万人増やす目標を掲げた。そうなると運営費だけでも毎年、約3千億円の追加が必要だ。
当面は特別会計の見直しなどで財源をひねり出すとしても、それは応急措置にすぎない。いずれは消費税を含む税制の抜本改革が避けて通れなくなる。そうした覚悟と議論の上に、思い切った改革を進めてもらいたい。
幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省という縦割り行政の弊害を取り払い、利用者のニーズに合ったサービスを提供することが求められている。そのためには幼保一体化は欠かせない政策だといえる。
子育てしながら働ける体制をつくるとともに、幼児期からの教育・人づくりに力を注ぎ、雇用や経済成長にもつなげる。そうした戦略的な取り組みの出発点とするためにも、超党派での合意を重視していくことが求められる。
「やっぱり『友達』っていいな!」と題した漫画をノートに残し、命を絶った群馬県桐生市の小学6年生、上村明子(うえむら・あきこ)さん。彼女が通っていた学校による調査結果が、明らかにされた。
学校は初め、いじめの存在を認めなかった。報告では、複数の子から心ない言葉を投げかけられたこと、一人だけで給食を食べていたことから、いじめはあったと判断。ただ、自殺との関係は明らかではないとした。
遺書は見つかっておらず、わずか2週間での解明は難しい。それでも、小さな心の叫びをどこかで誰かが受け止められなかったかと、痛みが胸に刺さって抜けない。
いくつか教訓の芽を指摘できる。
一つは、学級崩壊への対処のしかただ。1学期後半から子どもたちの落ち着きがなく、給食の班が乱れ、担任の指導も聞き入れられなかった。クラス全体が混乱する中で、明子さんは孤立に追いやられたかに見える。他の先生も応援に入ったが、一人の苦しみまでには目がゆき届かなかった。
明子さんや家族から「嫌なことを言われる」といった訴えが、何度か寄せられた。そのつど担任は、相手の子に声をかけたり、班替えをしたりするなどの対応をとった。いじめた子たちに気づきを与えるには、どんな指導が望ましかったか。明子さんに、逃げ場を用意してあげられなかっただろうか。
校長らの説明に、家族は納得していない。学校や教育委員会は調査を続けるという。一般に自殺は原因をつきとめにくいものだが、そうだとしても、何が起きたか事実を共有し、何が欠けていたか考え、丁寧に説明する。そうした過程なしには、残された者の回復と、真の再発防止はない。
外部の専門家の知恵も借りてはどうか。いじめた子も傷ついているかもしれない。そのケアも必要だ。そのうえで、最終的にくみとれた教訓は、広く発信してほしい。
文部科学省によると昨年度、学校が把握した児童生徒の自殺は165人。子どもが置かれていた状況が「不明」という事例が、6割近い。
なぜ我が子が死んだか知りたいと、親は誰しも思う。なのに、学校が詳しい聞き取りをせず、原因をあいまいにしたまま沈静化を図ることが少なくない。最初からいじめを否定するといった対応は不信を招く。
各地で子どもの自殺が続く。
6月に中学3年の男子が自殺した川崎市では、3カ月かけて報告を作成。いじめと認定したうえで、生徒の内面の葛藤(かっとう)や、学校全体の指導の問題まで指摘した。両親は「学校をどう変えるかに向かう第一歩」と評価した。
それぞれの命が訴えようとしたことは何だったか。耳を澄ませ、必死で探る。大人の責務である。