日本シリーズの激闘が終わったプロ野球。死力を尽くした延長戦の興奮は、その魅力をあらためて味わわせてくれた。ここからは、人気再興への足並みそろえた取り組みを急ぎたい。
中日ドラゴンズと千葉ロッテマリーンズの対決となった日本シリーズは、日本一を決めるにふさわしい熱闘だった。優勝したロッテは、常に攻め続ける、はつらつとしたプレーで栄冠をつかんだ。一歩届かなかった中日も投手力を中心とするスキのない野球で互角に渡り合った。リーグ三位からの初の優勝、シリーズ最長試合などの記録も生まれた大激戦。シーズンの熱いフィナーレをファンも楽しんだに違いない。
とはいえ、プロ野球を取り巻く環境がきわめて厳しいのはまったく変わっていない。今回のシリーズにも、それを象徴する影が差していた。第一戦、第二戦、第五戦で地上波のテレビ全国中継がなかったのである。長く国民的娯楽として存在してきたプロ野球の人気が、いまはそこまで落ち込んでいるということだ。
一方、横浜ベイスターズの身売り問題も持ち上がった。しかも、球団を保有するTBSホールディングスと、買収の名乗りを上げた住生活グループとの交渉が、まとまるかに見えて結局は決裂するという結果だった。それもまた現状を映し出している。球団の価値、ひいてはプロ野球全体の価値がどんどん落ちているのである。
今季のレギュラーシーズンは、セ、パ両リーグともに大接戦となり、大いに盛り上がった。クライマックスシリーズや交流戦を導入してきた成果もそれなりに出ているといえる。ただ、グラウンドの活性化だけですべてが解決するわけではない。安定した経営基盤をそれぞれの球団が確立させるためには何が必要なのか。米メジャーリーグへのスター流出も止まらない中で、いかにファンをひきつける戦いを増やしていくか。長年培ってきた奥深い魅力をどう発信していくのか。球界が力を合わせて取り組まねばならない重要課題は、実のところ、まだほとんど手つかずのままなのだ。
そして何より大事なのは、各球団をはじめとする関係者が足並みをそろえて改革に取り組むことだろう。あらためて言うまでもないが、この危機的状況を乗り切るためには共存共栄の方向を目指すしかない。グラウンドの真剣勝負が終われば、今度は球界全体の本気度が試されることになる。
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