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「ペンは剣よりも強し」は英国の戯曲の名せりふだが、これには「偉大な指導者のもとでは」と前置きが入る。「バロット(投票用紙)はブレット(弾丸)より強し」とは米国の16代大統領リンカーンが言った。これにもやはり「自由で公正な選挙のもとでは」と前置きが必要だろう▼その自由と公正からほど遠い選挙である。軍事政権の独裁が続くミャンマー(ビルマ)で20年ぶりの総選挙があった。その実態は、国際社会に胸を張れるとはとても言えない。言うなれば茶番である▼定数の4分の1がそもそも「軍人枠」なのだという。さらに、軍服を脱いだ候補が多数出馬する一方、供託金をつり上げて野党の立候補を難しくした。軍政に抵抗する少数民族の地域では選挙は中止になった。民主化運動の指導者スー・チーさんも排除されている▼あの手この手で勝利をし、「民主化」と「正統性」を宣伝する筋書きらしい。だが外国の選挙監視団を拒否していて、開票の公正も覚束(おぼつか)ない。これでは投票用紙が紙くずになりかねない▼20世紀は民主主義の世紀と言われる。だが21世紀になってなお、剣がペンを圧し、民衆が投票を「力」にできない国は残る。資源やインド洋への展開を視野に、ミャンマー政権を支える中国もそうだ。言論の自由は限られ、国政選挙はそもそもない▼似たもの同士の蜜月だろうか。いまや中国はミャンマー民主化の大きな壁とも言われている。またぞろの感ばかりが強い。「民衆は疲弊し、国が壊れ始めている」。本紙特派員の報告に胸がふさぐ。