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2010年11月9日(火)付

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会計検査報告―納税者の期待に応えよ

お粗末な経理処理や、昔ながらの流儀の漫然とした仕事が続いている。国のお金の使われ方を点検した会計検査院の2009年度の決算検査報告がまとまった。財政への危機感が広がり、[記事全文]

一斉特区提案―知事会の「奇策」、実現を

地域を限って規制を緩める構造改革特区を、多くの自治体が同じ内容で同時に申請したらどうなるのか。こんな「一斉特区作戦」を、全国知事会が初めて仕掛ける。自治体の現場の仕事の[記事全文]

会計検査報告―納税者の期待に応えよ

 お粗末な経理処理や、昔ながらの流儀の漫然とした仕事が続いている。

 国のお金の使われ方を点検した会計検査院の2009年度の決算検査報告がまとまった。財政への危機感が広がり、無駄な支出や事業仕分けに国民の関心が集まる時代に、変わらぬ「官」の姿が今年も浮かび上がった。

 指摘を受けた省庁や団体は言うまでもなく、政治家も検査の結果を吟味して、これからの予算編成や行政監視に役立てなければならない。

 検査院は霞が関に気兼ねして切り込みが甘いと言われてきた。だが、時代の要請を受けた変化も見受けられる。

 今回は、役所側がため込んだ資産や特別会計の検査に力を入れた。例えば旧国鉄職員の年金支払いにあたる独立行政法人。財務状況を調べ、業務を続けるために必要な金額を試算して、1兆2千億円を国庫に返納できるはずだと従来より踏み込んだ指摘をした。

 もうひとつ、目を引いた取り組みに公共事業の費用対効果の分析がある。

 全国66のダムやのべ676の道路について調べた。数字の間違いや裏付け資料の不備、事業費を抑えて効果をよく見せかける操作が数多く見つかった。鳥取県のあるダムは「必要な費用が経済効果を上回る」とされた。

 指摘された公共事業は、国土交通省などが行う政策評価の対象だ。会計検査と並んで無駄を減らす役割が期待される政策評価だが、前提となるデータがこのありさまでは、外部有識者の意見を聞いても適切な評価になるはずがない。担当者のミスで済まされぬ事態だ。指摘を受けた省庁は業務のあり方をいちから見直す必要がある。

 その事業は目的を達成して人々の役に立っているか。同じ費用でもっと大きな成果を上げられないか。

 政府の決算が正確で法令に違反してはならないのは、当たり前の話だ。納税者はそれを超えて、検査院に行政の監視を期待している。省庁が進める事業で重複して無用の支出になっているものはないかも気になる。

 中央官庁に対応して担当の局や課を決め、縦割りで進める方式に限界はないか。予算執行の有効性や効率性に立ち入った検査を行うには何が必要か。そんな問題意識をもって自らを点検することが検査院に求められる。今の追い風を逃さず、職員の士気と技量を高めることに取り組んでもらいたい。

 民間企業では厳格な決算や内部統制の確立は経営者の使命になっている。違反すると株主や社会から法的責任を含めて厳しい追及を受ける。会計監査にあたる者や機関の責務も重い。

 政府と検査院も同じだ。いや、預かるのが税金であることを考えると、それ以上の緊張感をもってしかるべきだ。予算の適切な使い方を求める納税者の思いに応えなくてはならない。

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一斉特区提案―知事会の「奇策」、実現を

 地域を限って規制を緩める構造改革特区を、多くの自治体が同じ内容で同時に申請したらどうなるのか。こんな「一斉特区作戦」を、全国知事会が初めて仕掛ける。

 自治体の現場の仕事のやり方が、法律による「義務づけ」でがんじがらめになっている現状を、特区の一斉提案で突き崩そうという発想だ。

 地方分権、地域主権改革を自治体側から動かす試みとして評価できる。多くの特区の同時実現を期待する。

 きっかけは、進まない地域主権改革を打開する強硬策として、大阪府の橋下徹知事が今夏に共同提案を呼びかけたことだ。その後、47都道府県の3分の2以上が同意する23項目をまず一緒に提案することにした。

 たとえば、「回復期リハビリ病棟の廊下の幅の基準廃止」だ。一般病棟の廊下の基準は2.1メートルだが、リハビリ病棟は2.7メートルが望ましいとされているため、一般病棟からの転換が難しい現実が各地にあるからだ。

 保育所や介護施設の職員数や居室の面積基準にも、自治体の裁量の余地を認めるよう求めるなど、長らく各省に拒まれてきた項目も多い。

 構造改革特区は2003年から始まった。「どぶろく特区」「福祉輸送サービス」など、すでに1100を超す特区が生まれた。そのうち、一部地域での成果を踏まえて全国展開された例も約700にのぼっている。

 事例は増えてきたが、地域の特性を生かすための「自治体からのお願い」のような扱いが目立った。だが、特区のもともとの狙いは地域発の発想で経済、社会構造を変えることだ。各省が縦割りで全国一律のルールをつくる手法を根っこから改める第一歩でもあった。一斉提案はそんな原点をみすえた政治的な作戦といえる。

 各省は、きっと反論するだろう。「義務づけ」をはずせば行政サービスの質が低下しかねない。いまの制度のもとでも工夫すればできる話だ。自治体が都合よくやりたい仕事ばかりで乱暴すぎる、などなど。どれにも一定の説得力はある。

 だが、ここは発想を変えよう。

 一斉提案を自治体での大規模な実地テストとみなせばいい。霞が関で対応を検討するだけでなく、実施例のデータを集める手段として活用すべきだ。

 なにしろ特区をめざす自治体の首長や議会は、失敗して住民に迷惑がかかれば選挙で責任を問われるのだ。それに、もし行政の質が下がるのなら、本来それをチェックするのは各省ではなく、住民の仕事のはずではないか。

 「義務づけ」廃止は、地域主権改革の中で自治体が最も強く望んでいる。だからこそ一斉に動くのだ。菅内閣はこれすら実現できないのなら、もう地域主権の看板を下ろした方がいい。

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