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2010年11月7日(日)付

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中国経済の課題―格差と不均衡を正さねば

国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界第2位に躍り出る中国が、経済改革の課題に直面している。国内では、格差拡大に象徴される成長のひずみ。世界との間では輸出と貯蓄の過剰に[記事全文]

災害復旧―奄美の助け合いから学ぶ

視界がまったくきかないほど猛烈な雨が一気に降り注いだ。集中豪雨に慣れているはずの島民が経験したことのない豪雨が、鹿児島県の奄美大島を襲い、3人が死亡した。あれから2週間[記事全文]

中国経済の課題―格差と不均衡を正さねば

 国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界第2位に躍り出る中国が、経済改革の課題に直面している。

 国内では、格差拡大に象徴される成長のひずみ。世界との間では輸出と貯蓄の過剰に伴う経常黒字の膨張。いまや世界の成長をリードする存在ともいえるだけに、放置すれば中国だけでなく、世界経済を混乱に陥れかねない大きなリスクである。

 中国共産党が発表した2015年までの新しい5カ年計画の素案もこうした問題解決を目指してはいるが、達成は容易ではない。

 国内の格差は深まるばかりだ。戸籍制度で区分された都市住民と農民の所得格差は、公式統計でも3倍を超す。都市部では資産バブル、農村部では暴動が起きるなど、社会と政治を揺さぶっている。

 今年で終わる現在の5カ年計画も、バランスのとれた成長を目指していた。だが、輸出の競争力を重視するあまり、賃金の伸びが抑えられてきた。所得再分配の制度も整っていない。不動産など資産への課税が進まず、相続税もないありさまだ。

 党や政府周辺の既得権益層が大きな壁になっている。高収入層は政治への影響力が強く、高額マンションを持つ官僚らも不動産課税に賛成しない。地方政府の幹部も農民から収用した土地の転売などで業績を上げることにばかり熱心だとされる。

 米国などが圧力をかけている貿易黒字減らしも、進んでいない。輸出依存の経済を改革するにも、税制改革や社会保障の整備などによる再分配を強化する必要がある。家計収入を底上げし、将来不安を和らげ、消費主導経済への転換を進めることこそ、内外の不均衡是正の鍵となる。

 さらに金融システムの改革や資本市場整備を通じて、国内の民間貯蓄を国内市場向けの産業に振り向けることも対外不均衡の是正に役立つ。

 先に発展した沿海部で賃金を底上げするには、産業の高度化も進めていかなければならない。その過程では外国企業との連携も欠かせない。

 ところが、知的財産権保護が不十分なうえ、レアアース輸出規制などで中国政府への信頼は揺らいでいる。貿易の恩恵に最も浴してきた国として、自由で公正な経済体制に貢献する姿勢に戻ることが求められる。

 改革開放路線による30年余の成長はトウ小平氏(トウは登におおざと)の「先富論」に始まる。悪平等主義を排し、一部の人や地域が先に豊かになることを認めた理論だが、「ほかの人や地域を先導して助け、次第にともに豊かになる」と続く。

 「両極分化を避ける」と説き、広範な人民に支持されてこそ成功すると語ったトウ氏の信念と実行力を、現指導部はかみしめるべきだろう。

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災害復旧―奄美の助け合いから学ぶ

 視界がまったくきかないほど猛烈な雨が一気に降り注いだ。集中豪雨に慣れているはずの島民が経験したことのない豪雨が、鹿児島県の奄美大島を襲い、3人が死亡した。

 あれから2週間余り。民間団体や個人参加のボランティアが島内外から駆けつけ、復旧作業に加わっている。

 被害が集中した奄美市住用町の住宅では、地元の人とともに屋内の土砂を運び出し、家の前に人の背丈ほどまで積み上がった土砂を取り除く作業に汗を流していた。

 「これは、大切な書類ではないですか」。泥まみれの家財を運び出すか、残しておくか。経験を積んだボランティアは一つひとつ家主にたずねた。被災者の立場で品物を扱う。家の人から「ありがとう」の言葉が出た。

 住民支援の拠点のはずの市住用総合支所は、濁流が流れ込んで150センチ以上浸水した。事務機器は泥にまみれ、機能はまひしたままだ。

 奄美市災害ボランティアセンターによると、ボランティアの人数は島内の被害が少なかった地区から、あるいは全国各地から延べ千人をゆうに超す。復旧活動で大きな力となった。だが、その力を有効に生かすために、教訓とすべき課題も残った。

 奄美市は当初、ボランティアを島内の人に限る方針をとった。都会と違って、島内の集落は隣近所や親類で助け合うつながりが保たれている。島民相互による「自助・共助」を尊重した判断ともいえるだろう。

 しかし、この島も高齢者の世帯が多い。家屋の清掃や家財の運び出しは大変で、暮らしがもとに戻るまで人手がいくらあっても足りない。

 それだけに、救援活動に豊富な経験を持つボランティアは優先的に受け入れてよかったのではないか。避難所から自宅へ帰れるのが1日でも早まれば、被災者も喜ぶだろう。

 被災した人が何に困っているか。それが分からないと、救援活動が上滑りになる。ボランティアから、早い時期に全戸を訪ねて被災者が何を求めているか聞き取ろうと声があがった。市は地元の区長に事情を聴き、ボランティア派遣の要否を判断したが、区長の回答とは違って、人手がなくて困った被災者もいたようだ。

 行政の動きを待たず、被災者自ら必要な支援を求めて情報発信し、ボランティアと協力することが大事だ――。

 阪神大震災で避難所の運営リーダーを長く務め、兵庫県災害救援専門ボランティアに登録する高砂春美さんが、土砂をさらいながらそう語った。

 自然が豊かな日本列島は、どこが激しい災害に襲われるかもしれない列島でもある。災害をどう防ぎ、被災から力をあわせて回復するか。奄美の人たちから学ぶことがたくさんある。

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