待機児童対策を迅速に進めるため、菅直人首相直属の「待機児童ゼロ特命チーム」が発足した。事務局長に、厚生労働省の文書偽造事件で無罪が確定、復職した村木厚子内閣府政策統括官が就いた。
特命チームは十月二十一日に初会合を開いた。菅首相は「一気に問題を解決してほしい」と指示、一カ月以内に緊急対策をまとめる。
政府は現在、少子化対策を強力に推進するため、これまで省庁や政策ごとにバラバラだった子育て支援策と財源をひとつにまとめる総合政策制度「子ども・子育て新システム」を検討している。
ただ、新制度のスタートは二〇一三年度から。不況の影響で今、認可保育所に子供を預けて働きたい世帯にとって、「待っていられない」状況だ。
厚労省によると、認可保育所の待機児童は四月現在、約二万六千人で三年連続で増えた。同省は無認可保育所などに入所できた子供は認可保育所の待機児童から除外している。民間団体「保育園を考える親の会」の調査では、そうした子供も含め、都市部で認可保育所に今年四月入所を申請しながら、入所できなかった子供は約四万三千人。申請した子供の三人に一人は入所できなかった。
政府は少子化対策の目標などを定めた「子ども・子育てビジョン」で、認可保育所定員を本年度から毎年五万人増やすことを目指している。今年の定員は昨年より約二万六千人増えたが、入所希望者の増加に追いつかない。
特命チームは、新制度のうち前倒しできる対策を十一月中旬ごろまでにまとめ、来年度予算案に盛り込む。高地価の都市部でも設置できる小規模保育所の実施、幼稚園・学校の空き教室利用、規制緩和など「使えるもの」はすべて使う対策を検討中だ。
まとめ役の村木氏は、同省で子育て支援や雇用政策に取り組んできた。六月に施行され、男性の育児参加を後押しする改正育児・介護休業法の法案づくりにもかかわった。改正案を議論した同省審議会の分科会では会長が、当時逮捕されていた村木氏の仕事ぶりに対し、異例の謝辞を述べるなど関係者には定評がある。
特命チームの最大の役目はスピードだ。「話題の人」が取り組むことで少子化対策に関心も高まる。村木氏は「財政が厳しい中で(既存施設など)資源を有効に使いたい」と知恵を絞る。実効性のある対策を打ち出してほしい。
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