HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17352 Content-Type: text/html ETag: "8be1a-43c8-bdb721c0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Fri, 05 Nov 2010 22:21:41 GMT Date: Fri, 05 Nov 2010 22:21:36 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年11月6日(土)付

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 とかく人は、耳にしたことをすぐ口にしたがる。性悪説で知られる中国の荀子は「口と耳の間はわずかに四寸」と戒めている。かくて「ご内密に」「ここだけの話……」といった紳士淑女の「協定」は、まず守られぬのが相場となる▼国家組織の耳目と口も、油断ならず近いらしい。警察の公安情報とみられる文書に続いて、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオがインターネットに流れ出た。それぞれに背景も意味合いも違うけれど、政府、当局の失態という点では変わるところがない▼尖閣のビデオは公開か否かで揺れていた。流した者は不明だが、海保や検察に疑いが向いている。国民の知る権利に応えた「義賊」なのか、それとも国家への「謀反人」なのか。ネットに集まるコメントは「よくやった」が大半という▼いずれにしても政府には痛い。穴のあいた樽(たる)よろしく重要情報が漏れる国は、世界から信用されまい。さらにビデオは、中国に対する数少ない持ち駒でもあった。だが使うことも手の内に残すこともできず、もはや木ぎれである▼流出という「現実」が、政府の逡巡(しゅんじゅん)の先を行ってしまった。ロシア大統領の北方領土入りにせよ、この政権はどうも、もたつく間にやすやすと現実に先んじられる。下手な外野手の頭上を飛球が越えていく印象だ▼政治の厳しさを「予期せぬことが起きると、いつも予期していなければならない」と言ったのはサッチャー英元首相だった。民主政権は同好会的なぬるさを克服できようか。下手も絵になるのは、草野球だけである。

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