東南アジア諸国連合(ASEAN)や日中韓などの東アジアサミットに、来年から米ロ二大国が加わることになった。新たな枠組みの中で、日本ならではの存在感をぜひ示したいものだ。
参加国の総人口は三十八億人。全世界の過半数の人口を抱える巨大さだ。
米ロ参加はハノイで先月末、菅直人首相や中国の温家宝首相も参加した東アジアサミットで正式に決まった。
サミットは五年前にASEAN十カ国と日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計十六カ国で始まったが、来年から十八カ国の首脳が毎年そろう。
人口は中、印、米、インドネシアの上位四カ国、国内総生産(GDP)でも米、中、日の上位三カ国が含まれる。
ASEANは当初、拡大に消極的だった。方針転換には、経済のみならず安全保障でも中国の影響力が増す中で「力の均衡」を図る思惑がある。
鳩山由紀夫前首相がこのサミットを足掛かりに東アジア共同体構想を唱え、米国を加えるか否か議論があったのはつい昨年のこと。米ロ加入は、その先を行く動きである。日本には目まぐるしい国際情勢に合った新戦略が必要だ。
米中間選挙は、オバマ政権に経済失政への不満を突き付けた。環太平洋連携協定(TPP)への参加は、中国などアジア市場の巨大さと急成長を見込んでのことだ。日本はこれまでの実績にあぐらをかいていられない。
安全保障では、日米の連携協調はこれまで以上に重要になるだろう。しかし「米国の代弁者」だけの日本ならば、もはや存在感は失われる。
中印の躍進に米ロの加入で、サミットやASEAN域内で日本の影は薄らぐだろう。しかし、その存在感を発揮できる分野はいろいろある。
日本メーカーの進出で成長したタイの自動車産業は、日本へ逆輸出するまでになった。ベトナムでは新幹線導入や原発発注で、日本とのつながりがより深まろう。フィリピンのアキノ大統領は、東南アジア非核兵器地帯の充実に熱心だ。中国を隣人として地域の枠組みにどう巻き込み、地域の発展につなげていくかは参加国共通の課題でもある。
ASEAN諸国ほど、日本とつながりが長くて深い国々の集まりはない。日米協調の、また日本独自の役割が、きっとあるはずだ。
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