HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 02 Nov 2010 20:10:34 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:二人殺害判決 極刑避けた市民の熟議:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

二人殺害判決 極刑避けた市民の熟議

2010年11月2日

 極刑の適否を市民が初判断する裁判だった。耳かき店従業員ら二人殺害事件の判決は無期懲役となった。裁判員裁判で死刑を出す場合は、原則として全員一致とすべきかどうかの論議も投げかけた。

 死刑か、無期懲役か−。裁判員裁判では初の死刑求刑事件だった。プロの裁判官でも悩む判断に、五日間の審理と五日間の評議を費やし、結論に導いた裁判員の労をまず、ねぎらいたい。

 現行の裁判員制度では死刑とするには、三人の裁判官と六人の裁判員の計九人のうち、裁判官を含めた過半数に到達せねばならない。評決の結果は公表されないが、仮に五人が死刑、四人が無期懲役と判断が分かれた場合をどう考えたらいいだろうか。納得する評決と言い切れるだろうか。

 死刑は尊厳たる人間の命を永久に奪う究極の刑罰である。他の刑罰と本質的に異なる点だ。それゆえ、結論が後悔を伴うものであってはならない。負担が重くなろうとも、全員一致に向けて、熟議に熟議を重ねるべきである。それが自信の持てる判断といえよう。

 否認事件の場合はなおさらだ。四人が無罪の意思を表明していれば、合理的な疑いがぬぐい切れないと受け取られかねない。取り返しのつかない死刑で、誤判は絶対的に許されないからだ。米国では州にもよるが、重罪事件での有罪か無罪かの評決方法は、陪審員の全員一致が原則とされる。

 今回の判決文では、被告人に対し「苦しみながら考え抜いて、内省を深めていくことを期待すべきではないか」との一節があった。極刑選択か否かを分ける厳粛な論議の“足跡”のようだ。市民自身も悩みつつ考え抜いたのだ。

 死刑への慎重な判断が徹底されるために、原則全員一致制の導入の是非は、裁判員制度見直しの論議のポイントにもなるだろう。一審ばかりでなく、高裁、最高裁レベルをも含め、刑事裁判全体にかかわる問題として、今後、議論を深めてもらいたい。

 情報公開の点でも問題がある。今夏に刑場が初めて公開されたが、死刑の実態を知るにはあまりに不十分だ。裁判員から質問を受けても、裁判官は表面的な事項しか答えられないのではないか。死刑囚がどんな心境で、どんな日常を送っているのか。

 今後、次々と死刑求刑事件は起こる。極刑について秘密で覆いつつ、裁判員に極刑判断を迫っている現状には困惑を覚える。

 

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