HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Wed, 03 Nov 2010 00:13:04 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:日中関係を考える もろい大国と付き合う:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

日中関係を考える もろい大国と付き合う

2010年11月3日

 ハノイで行われるはずだった日中首脳会談のドタキャン騒動は中国との付き合いに不安を強めました。隣の大国で一体、何が起きているのでしょうか。

 東アジアサミットに参加した首脳が顔をそろえた記念撮影で、菅直人首相の隣に立つのを拒む。

 首脳会談を直前にキャンセルした中国の温家宝首相の対応には、いささか子供じみたものを感じました。十三億の大国の指導者は何を恐れているのでしょうか。

 翌日に自ら菅首相に近づいて語った言葉にヒントがあるのかもしれません。温首相は「ゆっくりと話す機会を近くつくりたい」と語りながら、不安定な民意を引き合いに外交に関する発言は慎重にしてほしいと述べたといいます。

◆外交に発言強める軍

 首脳同士が交わした言葉を日本政府は公表しましたが、中国側はあいさつとだけ紹介しました。

 温首相の言葉が、国内事情が気になり、会談できなかった本音を漏らしたからかもしれません。

 温首相を悩ませていることに中国軍の台頭があることは間違いありません。最近、軍は外交に対する発言力を強めています。

 代表的な例を挙げましょう。

 今年三月に起きた韓国軍哨戒艦の沈没事件で米国と韓国は事件現場の黄海で合同軍事演習を行い、北朝鮮に警告することにしました。

 演習計画が明らかになると、中国メディアには軍人が盛んに登場し反対発言を繰り返しました。

 七月初めには、ついに現職の馬暁天副総参謀長が、香港のテレビに「中国領海に近すぎ強く反対する」と言い切りました。米国への配慮から態度表明を避けていた政府が演習反対を明言したのは、それから一週間後でした。軍人が外交方針を決定づけたのです。

 こうした事態に中国外務省高官も「軍が外交に口を出すべきでない」と語り憂慮を隠しません。

◆ネットの「愛国情熱」

 しかし、それを公然と口にするのはタブーです。軍人のメディアへの登場を戒めた外交界の重鎮はインターネット上で「売国奴」と集中攻撃されました。ユーザーが四億人を超えた中国のネットは今や世論の主流になっています。

 しかし、政府の統制下にある実態は既成メディアと変わりがなく、激しい物言いが許されるのは政府公認の「愛国主義」を鼓舞する言論に限られています。

 民衆は不満を解消するように「愛国情熱」を発揮し「売国奴」を攻撃します。それは対外強硬路線を主張する軍への、またとない援護射撃になっているのです。

 人民解放軍は近代国家として、実に異様な軍隊です。国家財政に支えられながら、いまだに「共産党の軍隊」を自任し「国軍化」を「危険思想」と排撃します。

 統帥権を握る党中央軍事委員会は、メンバー十二人のうち主席は軍歴のない胡錦濤総書記兼国家主席、副主席は習近平国家副主席が、それぞれ兼務しています。

 しかし他のメンバーは、すべて軍人で全国人民代表大会や中央政府は事実上、干渉できません。

 戦前の日本軍が、統帥権は天皇にあるという建前で内閣や国会の干渉を許さず、軍部の独裁体制を築いたことを思い出させます。

 中国革命を導いた毛沢東主席や、〓小平氏と異なり、江沢民、胡錦濤という軍歴のない二代の総書記が軍事委主席に就任してから軍人の統制は常に難題でした。

 二人は結局、二十一年連続で国防費を二けた成長させたり、将官の昇進を乱発したりして、軍の主張や要求に迎合することで指導者の地位を保つしかありませんでした。

 胡主席は二〇一二年の党十八回大会で総書記を習氏に譲っても、〓、江氏にならい軍事委主席に二年留任して影響力を残そうとしているようです。そうした思惑もあって、協調外交を主張してきた胡主席や温首相も軍の対外強硬論を無視するわけにはいきません。

 対外強硬論は国力充実に伴いナショナリズムを強める民衆の圧倒的な支持も得ているのです。

◆尖閣事件が成功体験

 尖閣事件は中国が口では領有権を主張しながら、日本の実効支配を黙認してきた事実を明るみに出しました。日本には協調よりも圧力の方が有効であるという「成功体験」を中国に残しました。

 胡・温指導部が対日関係を緩和しようとしても軍を先頭に党・政府内、民衆に強まる強硬論がそれを許しません。十月中旬から中国の地方を中心に広がった「反日」デモは、その証拠です。

 台頭する中国の強硬論に対し日本は米国や周辺国と連携し、けん制を強めなければなりません。

 一方で支持基盤がもろくなった協調外交を主張する人々を支援し復権を図る複眼的な対中戦略を構築することが問われています。

※〓は登におおざと

 

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