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2010年11月3日(水)付

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公務員人件費―縮み志向でない削減策を

準備も覚悟もないまま公約に掲げ、空手形に終わったというほかない。政府が今年度の国家公務員の給与について、人事院勧告通り平均1.5%減とすることを決めた。[記事全文]

ブラジル―南の大国、ともに進もう

ブラジル大統領選で、ルラ大統領の後継であるジルマ・ルセフ前官房長官が勝利した。安定成長を進める南の大国と、関係を一層深めたいものだ。ルセフ氏は、この国初の女性大統領にな[記事全文]

公務員人件費―縮み志向でない削減策を

 準備も覚悟もないまま公約に掲げ、空手形に終わったというほかない。

 政府が今年度の国家公務員の給与について、人事院勧告通り平均1.5%減とすることを決めた。

 菅直人首相は9月の民主党代表選で「勧告を超えた削減を目指す」と公約した。違反は明らかだ。率直に認め、謝るべきだろう。

 一方、民主党としてマニフェスト(政権公約)に掲げてきたのは「総人件費2割削減」だ。

 財政危機で国民の負担増が避けられないとき、人件費を聖域にはできない。ぜひ実現させてもらいたい。

 ただ、それにはよほど周到な準備と知恵が要る。

 優秀な人材が集まらず、政策立案能力が低下するのを防ぐ方法はあるか。新規採用を絞った結果、若い世代にしわ寄せすることにならないか。

 様々な問題を考慮しつつ、公務員の数を減らしたり、一人ひとりに払う額を抑えたりする知恵を絞らなければならない。「エイヤーと覚悟一発でできる話ではない」(仙谷由人官房長官)のは前々から分かっていたはずだ。

 問題はこれからである。

 公務員は、スト権などの労働基本権を制限されている。その代わり人事院が民間企業の動向を調べ、その勧告に沿って給与水準を決めてきた。

 基本権を制限したまま、勧告を超えて「深掘り」するのは、うまく運ばなければ憲法に抵触するおそれもある。それが、政府がぶつかった壁だ。

 政府は基本権の回復を図り、労使交渉を通じて給与を決める仕組みに変えるため、来年の通常国会に関連法案を提出するという。

 だが、労組が簡単に賃下げに応じるだろうか。新たな仕組みのもとでは、どう公務員の理解を得るかがなおさら重要になる。

 まず政治家が自ら身を削ることだ。経営者たる国会議員の歳費に手をつけないで、社員である公務員の給与に切り込むことはできないだろう。

 加えて、業務の合理化を進めるべきだ。国と自治体が似たような仕事を手がける二重行政を解消する。補助金の一括交付金化とともに補助金関連業務を削減する。国会議員が早めに質問内容を政府に通告し、霞が関の残業を減らす。「業務仕分け」が必要だ。

 そのうえで人件費をどう減らすか。

 片山善博総務相は鳥取県知事時代、給与削減で生んだ財源で官民の雇用増を図った。若い世代へのしわ寄せを避けるためにも参考になる発想だ。

 若い公務員を民間企業や介護や教育の現場へ出すのも一案かもしれない。その間の給与を民間が負担すれば費用は減り、経験を政策立案に生かせる。

 官僚からもアイデアを募ればいい。発想まで縮んでは人件費は削れない。

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ブラジル―南の大国、ともに進もう

 ブラジル大統領選で、ルラ大統領の後継であるジルマ・ルセフ前官房長官が勝利した。安定成長を進める南の大国と、関係を一層深めたいものだ。

 ルセフ氏は、この国初の女性大統領になる。軍政に抗して武装闘争に加わり、3年間投獄された経験もある。

 ブラジルはかつての経済危機から脱し、今や中国、ロシア、インドとともに「BRICs(ブリックス)」と呼ばれる新興経済国の雄になった。世界の熱帯雨林の3分の1を有し、レアメタルなどの資源も豊富だ。鉄鉱石やバイオエタノールの輸出量は世界一だ。

 他の新興国とは異なる点も多い。25年前の民主化以降、民主主義が定着している。国内格差や治安の問題もあるが、核兵器を持たず、目立った地域紛争やテロもない。

 そして、何より大の親日国だ。

 日本からは1908年から70年代までに約25万人がブラジルに渡った。いま日系人は150万人といわれ、様々な分野で活躍する。サンパウロでは、地元料理のシュラスコ(焼き肉)店より、すしを出す店の方が多いといわれるほどだ。入管法の改正により、90年からは多くの日系人が来日し、ものづくりの現場を担った。

 日本の協力でブラジルに製鉄所が造られたり、不毛の地だった内陸のセラード地帯が世界有数の穀倉地域になるなど、蜜月の時期もあった。

 ただ両国の政治経済のつながりは、ブラジルが累積債務とインフレに悩まされた80年代、日本が景気低迷に苦しんだ90年代という「失われた20年間」で、ずいぶん遠くなってしまった。

 乗用車販売でトヨタの昨年のシェアは2%あまり。携帯電話や家電で存在感を増すのは韓国メーカーで、貿易相手国として中国も伸びる。日本航空の直行便もなくなった。父祖の国に働きに来た日系人も、多くが差別や子どもの教育に悩み、幻滅を抱いている。

 もう一度、両国関係を深めたい。

 すでに、熱帯雨林の違法伐採の監視に日本の衛星画像が活用されている。新幹線の売り込みも大事だが、海底油田掘削やエタノール生産、森をつくる農業「アグロフォレストリー」など、ブラジルが世界に誇る技術もいくつもある。両国の資金と技術を合わせ、アフリカなど途上国の振興を図る「三角協力」を進めれば外交に有益だ。

 ブラジルでは4年後にサッカー・ワールドカップ、6年後にリオ五輪が控える。現地での日本語教育の拠点整備や交換留学生の拡大、ワーキングホリデー制度の導入などで、互いを知る若者を多く育てたい。

 G20など国際会議の場で、新興国の存在感はいよいよ増している。親日国ブラジルとのきずなを強めることは、世界での日本の発言力を増すことにもつながるだろう。

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