財界の論客として知られた故諸井虔さんは、こんな言葉を残した。<見返りを求めて政治献金をしたら贈賄になる。見返りを求めなければ会社への背任だ>。汚職と背任の間を綱渡りする政治献金の危うさをうまく表現している▼リクルート事件など、政治家への巨額の資金提供が世論の指弾を浴びるたび、自民党政権は政治資金規正法の改正を重ねてきたが、肝心な部分はいつも骨抜きにされ、抜け穴がつくられてきた▼歴史的な政権交代を遂げた民主党も、政治とカネの問題でつまずいた。企業・団体献金の全面禁止は、窮地から抜け出すための取り組みだったはずなのに、民主党は今年に入って自粛していた企業・団体献金の受け取りを再開するという▼いろいろと理由を挙げても、衆院選マニフェストで「三年後の全面禁止」を明記しているのだから明らかな逆行だ。これでは、政権交代に期待した有権者の期待はしぼむばかりだ▼特別会計を対象にした事業仕分け第三弾の前半戦が終わった。「無駄の温床」と呼ばれる特会制度に公開の場でメスを入れた意義は大きいが、財源捻出(ねんしゅつ)効果は薄く、「埋蔵金だけではなく埋蔵借金もある」と事前に予防線を張った▼政権交代の象徴である事業仕分けが、「もう予算削減は無理」という印象を残し、結果的に消費税増税の地ならしにならないか。そんな不安をぬぐえない。